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高田明典『世界をよくする現代思想入門』(ちくま新書、2006) 感想とレビュー

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今回の新書の評価は五段階中4.
非常に知的に興奮できるおもしろい書籍であったと言える。
文章は現代思想や哲学をあつかったもののなかでは比較的わかりやすい、平易なものであったと思う。といっても、十分に難しい文章ではあるが。ふと注意せずに読み飛ばしているとまったく意味が分からなくなるというくらいには、密度の濃い文章であった。だからそうしたときは巻き戻して再び文章をじっくりと読まなければならない。
この本はアマゾンのレビューなどでは「最終的になにが世界をよくするのかわかなかった」といった批判を浴びていて、たしかにそういう側面はあるのだが、良くも悪くも、誠実に「世界をよくする」ことをつきつめて考えていった本である。
世界をよくするというのは、文字通り、どうしたら戦争や貧困などがなくなって平和になるのかな、といった表面上の問題ではない。この本では、そもそも〈よい〉状態とはなんぞや、〈世界〉とはなんぞや、というところに論点が集中される。結論からいえば、万人に共通する〈よい〉という状態はない、と言い切っているし、後半はやや私も読解が追い付いていなくてこころもとないのであるが、〈世界〉とは、人それぞれの、その人を中心とした半径何メートルの世界像ということになるらしい。
そういう意味で〈よい〉ということは論理的につきつめていくとどういう意味なのか、〈世界〉とはどのように認識されるものなのか、といったことを論理的にずっと考えていくわけである。だから、タイトルを安易に勝手に解釈して、現代思想はどうしたら戦争や貧困をなくすことができるのだろう、それに対する何か特効薬的なことが書いてあるのではないか、と思って読んだアマゾンの読者などは、しっぺ返しをくらってしまうわけである。

筆者の比喩表現はやや微妙なところもあるが、それでもなるほどと思わされる部分は多い。
この本の筆者は哲学と現代思想の違いをこのようにのべる。哲学がノミやカンナであるのに対して、現代思想は電動工具のようなものだと。哲学は基本的には誰でもが扱える素朴なものであるが、それをうまくつかうには職人技のような熟練の技術が必要になる。それに対して現代思想というのはそのものだけに対してならば誰でもが使用できる便利な道具なのだと。しかし、反面、うまく使えないことや、手の感覚で微妙なラインを出したりすることができない、といったものだと述べるのである。
現代思想とはなにを目的にしているのか。それは「幸せになること」である。これは哲学にも共通することだろう。本来我々は、なぜ学ぶのかというと、「幸せになる」ためだったはずなのである。だが、現在においては勉強はつらいものであり、それ自体が人を不幸にしていることも往々にしてあるのだから、本末転倒しているとしかいいようがない。
哲学との違いは、哲学がそのものの意味、形而上学を考えるのに対して、現代思想というのは、より実践的である点だと筆者はのべる。
①幸せとはどのような状態なのかを設定し、②現在はどのような状況なのかを確認し、③現状から幸せまでどのようにしたらいけるのかという方針を決定し、④それを実践し、トライアンドエラーを繰り返す、というのが現代思想の基本的なスタンスというわけである。
筆者は現代思想がなぜわかりにくいのかということを、これらを説明しながら、その目的や手法のためにかかれているということがきちんと理解できていないからだと言う。確かに、なぜ小難しい現代思想書を読んだ時に、一体なにについて書かれているのだろうか、と思うことは多い。それは基本的には人間はどうしたら幸せになれるのか、ということについて書いているのだということを認識するだけで、きっとずいぶんと読み方が変わることだろう。

本書には最後にかなりの分量で、読書案内が書かれている。それぞれの思想家たちへの道案内となっていて有効である。私は今回は初めての高田氏の本だったので、他の書籍をまだ読んでいないが、『難解な本を読む技術』(光文社新書)などを出していることから推察するに、こうした思想書へのよき導き手となってくれるような気がする。

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