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『イリュージョニスト』(2010) オシャレで暗いフランス映画

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 「『ぼくの伯父さん』をはじめ、生涯にわずか6作品を監督し、今なお世界中で愛され続けているフランスの喜劇王ジャック・タチ。彼は、「FILM TATI No.4」という娘に捧げた1本の脚本を遺していた。半世紀にわたりフランス国立映画センターで眠り続けていたこの幻の脚本に息吹を与えたのは、長編デビュー作『ベルヴィル・ランデブー』で一躍脚光を浴びたシルヴァン・ショメ監督。本国フランスで100万人以上を動員する大ヒットを記録し、世界33カ国以上で公開され、各国の映画賞を総なめにした前作に続き彼が挑んだのは、前作とは正反対の、シンプルにして、しかし豊潤な、ひとりの時代遅れの手品師の美しい物語。
 タチのエスプリ、そしてショメが創造したノスタルジックで美しい映像世界が見事融合し、永遠に心に刻まれる物語がここに誕生した。」http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%8B%E3%82%B9%E3%83%88-Blu-ray-%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%A1/dp/B00565BZO4

 映画を観るときにはいつもほとんど事前の情報をいれずに見る。
 もしかしたら、このタイプの映画は、事前にある程度の知識を得ていた方がより楽しめるのかもしれない。
 この映画は淡々とただ一人の老手品師をおっていった映画だ。内容が暗いので、だんだんうつになってくる。
 音楽も美しく、たんたんとオシャレなカフェにでもいるような気分になる。映像も美しい。日本のアニメにはない独特のタッチは、観た瞬間違和感を覚えるが、それになれると、なんともこの枠をかこったような線描に愛着を感じるのである。
では内容はどうか。内容もうつくしいといえば美しい。1950年代のパリで、客をなくしてしまった老手品師は、まだ電気が通るか通らないかというエジンバラに新天地を求める。その貧しい田舎町で出会った少女アリス。このアリスは手品師のことを魔術師だと思い込み、彼の後を追うのである。
 当初はいい。魔術師だと思い込むアリスに、その期待に応えようとする老手品師タチチェフ。二人は言葉が通じないながらも、お互いに必要とする存在となったのである。
 だが、アリスの思いは、老手品師には重すぎたのである。徐々に自分の願いを簡単に叶えてくれると思っているアリスの欲求は強くなる。美しいドレス、美しい靴。それらが実際にはかなりの金額が必要となるものなど、この少女アリスには想像もつかないのである。それに応えたいタチチェフであるが、徐々に厳しくなってくる。田舎町エディンバラを出た二人は、再びパリにもどる。
 そこでなんとか暮らす二人であるが、経済感覚のないアリスは老手品師にとってはお荷物となっていたのだ。もちろん、彼はアリスのことが好きなのだろう。そこにはもちろん異性としての恋愛感情のようなものもすくなからずあるはずである。多くは孫を見るような視線だったとしても。アリスの喜ぶ顔が見たいタチチェフはさまざまな仕事を探す。
 そこには、ただただ陰鬱な感じしかない。人間はなぜ働かなければならないのだろうか。
 そしてタチチェフのように働いてもお金のほとんど入らないワーキングプアのような人物が描かれれば、彼が働いた自動車工場で、真っ白な高級車を乗り回す、お金持ちも登場する。彼等には一体なんの差があったのだろうか。
 働くことに疲れているだけではない。すでに生きることに疲れている人達がこの作品には多数でてくる。日本のアニメーションではありえない、自殺しようとしている人まででてくるのだ。彼の場合は、その瞬間はアリスのスープという愛情の象徴のようなもので救われるが、その後アリスがつきっきりで彼に愛情をそそげるわけでもなし、彼がそのスープ一杯で人生をやり直そうと思えるわけでもない。いずれまた自殺への衝動は起こり、自殺してしまうことであろう。
腹話術師も自分の人形を売らざるを得なくなってしまい、最後にはホームレスに。
 老手品師もそんななか、なんとか身を持ち崩しながらもアリスをおいて外の世界へと赴くのである。
 ただただ暗く、生きることの不条理さ、つらさ、働くことのつらさを描いた作品といえるであろう。

 ひとつ救いなのは、この世界ですでに何の存在意義も見いだせなかった老手品師がアリスという少女を一人の大人の女性へと成長させることが出来た点だろう。タチチェフは最後に「魔術師は存在しない」という置手紙を残してアリスのもとを去る。それは、アリスが一人のボーイフレンドを見付け、すでに魔術師の存在を必要としない、あるいは魔術師の代わりに現実のボーイフレンドをみつけた、ということを意味するのかもしれない。タチチェフはそれはアリスの勝手な成長であって、自分は何にもしていないと思っていることであろう。しかし、傍から見れば、やはりあの田舎娘で、そのまま捨て置けばどんな人生をおくろうと誰にも省みられもしなかったような少女が、都会の垢抜けた少女にまで成長できたのは、タチチェフのおかげだといっていい。彼はその点で、最後また他の地へ移動し、果てしない旅がつづくのであるが、そのさなかにひとつの大事なものを残すことができたということができるだろう。

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