『下町ロケット』 池井戸潤 直木賞受賞  感想とレビュー 一つのことを貫きとおすこととは

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今読み終えました。圧倒的な爽快感に完膚無きほどに叩きのめされました。
どんな小説なのかと思って読み始めたら、その面白さにはまって一日で読んでしまいましたよ。
主人公は佃航平という男。物語冒頭、彼が責任を持ったロケットの発射の場面から始まります。ところがなんとそのロケットに異常が発生。このままでは墜落、民家への激突も避けられないというところで、安全装置により撃破、海の藻屑となります。
小説の本筋はその後7年経って、彼が家を継いで佃製作所という町工場の社長をしているところから始まります。
ところがいきなりこの町工場の弱点でもある著作権などの法的な盲点を突いてくる輩がいます。悪徳な手法で利益のためならどんな手段も選ばないナカシマ工業とやらが、特許侵害だと訴えてくる。
やっとこさ解決策を見出せたかと思うと今度は、大手企業の帝国重工が開発を進めていた水素エンジンが、実はその完成の3ヶ月前に特許を佃製作所が取得していたということで、特許を強引に奪おうとしてきたりとてんやわんやの大騒ぎ。
読んでいるとだんだんと佃社長の心情が伺い知れてなんとも腹立たしい場面が続出。社長も腹を立てれば、私も腹を立てると乱立するのは腹ばかしなのですが、小説は他の立場からも描かれます。
もちろんナカシマ工業の人間から描かれた場面では、なんだいこんなやつと思いながら読むわけですが、帝国重工の財前部長の立場から描かれる部分は次第と応援したくなってきます。実は財前部長は家が町工場だったという過去をもち、終いには佃社長の味方にまで。ただその部下の富山という男が狡猾で嫌なやつで、上司である財前のポストを狙うとともに、水原役員に取り入ろうとして佃製作所から何とか特許を奪えないかと試行錯誤してくる。
そんな折、社内では未だ研究者としての夢を完全に捨てきれない佃社長の経営方針に対して、若手の社員たちが反旗を翻す。
さて、この大荒れに荒れまくった波を佃製作所は超えていけるのか、佃社長の夢は叶うのか、どうかその部分は皆さんが本を手にとって読んでみてください。
最初はなにかファンタジーかなにかかなと思ったんですよ。だって下町でロケットが飛ぶわけ無いでしょ。まあ蓋を開けてみればなるほどそういうことかと言う事で、興奮しながら、たまには憤りながら楽しく読ませていただきました。
アメトークなんかでも取り上げられてきてなんだか現在町工場ブームのような感じがいたします。しかし、この本を読むことによってまた、そしてさらに町工場への理解が深まり、応援の念が強まりました。
日本の町工場って本当に洒落にならないくらいの技術を持っているんですよ。それこそ今回の小説のように大企業が研究費をいくらも費やさないとできないこともやってのける技術や熱意があるんですね。
今日本は経済もさながら、震災の影響などで暗いじゃないですか、しかしだからこそこうした人の心に希望を灯すような明るい物語が必要だと感じますね。
今読み終えて、心にあったなんだかもやもやして重くて暗いものがスッと消えてゆくような、まるで秋晴れの清清しい空のような、そんな心持がいたします。
夢を持ちそれに只管に向かって行く、そんな頑固で男丸出しの姿勢がなんとも痛快、偏屈な私が持たなければいけないものだなと思いました。これは、現代小説では最高のレベルですよ。読むことをお勧めいたします。

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