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『.hack//Quantum』 感想とレビュー

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 ここ最近、アニメにおける電脳空間と現実とを描いた作品を見ることが多い。この「.hack」はシリーズもので、今回私が見た「quantum」はシリーズとしては第9弾(OVAとしては第6作目)にあたる。この作品との出会いが突然だったので、他シリーズをまだ見ていないのであるが、簡単に言えば、『サマーウォーズ』の大人向け作品といったところだろう。もちろんこちらのほうが古いのであるが。
 今回の作品はOVAということもあり、よく作り込まれていて、愉しく鑑賞することができた。アニメ25分ほど、かける3話であるから、少し短い映画という感じだろう。起承転結で、よくまとまっている作品だった。
 作品世界は、CC社が運営する世界最大級のネットゲーム「The World R:X」を舞台に展開する。このゲームに参加する「サクヤ」「トービアス」「メアリ」であるが、ある事件に巻き込まれ、メアリこと、エリがゲームから帰還できなくなってしまう。この電脳世界から帰還できなくなってしまう、というのは、マトリックスによって世界的に広く知れ渡った現象であるが、それ以前からこのような発想はなされていた。日本でも、コナンの映画に電脳世界に閉じ込められて帰ってこられないという設定のものがあったように覚えている。
 私は文系の人間であるからこのようなことがあと何十年後かに実際に起こり得る現象なのか、ちっとも想像がつかないのであるが、極めて怖い想像力であるとは感じる。人間にこれだけ想像できるということは、おそらくそんなに実現不可能なことではないのだろう。意識がもどらなくなるようなことはあるのかもしれない。しかし、おそらく現実世界でそのようになった場合、魂や意識というものが電脳世界に取り残されるということはなく、単に肉体が植物状態になってしまうだけなのではないだろうか。魂や意識というものが、そんなにきれいに切り離されて、そして再びその肉体にもどるとはとても考えられないのである。

 この作品は当然物語であるから、切り離された魂は、なんということもなく、簡単に肉体に戻る。
 今回の作品を見ていておもしろいなと思ったことがある。しばしば電脳世界などを舞台にする作品は、その反動としてか、肉体に眼差しが向かっていく。電脳など、仮想の、バーチャルな世界を描くことによって、その反対に、現実の物理の世界が浮き彫りになってくるのである。
 今回の映画も、それまでバーチャルな世界で、痛みを感じることもなく、ゲームをしていたのに、突然そこに「痛み」が生じてくるというのが、生々しく表現されていた。いままで仮想だと思っていた世界が、突然現実化してしまうことの怖さというものがうまく描写されていたと思う。ここに、アニメにおける身体論があるように私には感じられる。
 ドラえもんなどに代表される日本のアニメは、そのもとである漫画と同様、生身の身体を持つことがなかった。特にここ近年で本当に記号化された身体だなと感じたのは「ベルセルク」の映画で、あそこではガッツがその名の通り百人切りをしてみせるが、あそこで切られる側の存在は、生身の身体を持っているようにはとても思えないのである。ガッツとの肉体の堅さのようなものがまったく違った次元で描かれてしまっている。ああいうほとんど意味を見いだせない肉体の死というのが、記号の身体というものである。
 今回もバーチャルな空間であるから、アニメーションが求めていた記号の身体とほぼ同じ世界観を共有することになる。アニメで実際に生身の身体を持つものがいないように、バーチャルの世界でも生身の身体を持つ者はいない。そうすると、アニメとバーチャルというのは、生身の肉体を持たないという点では共通し、そのために、しばしば二つのメディアが融合することがあるのである。もともと類似的なものであるので、融合しやすいわけだ。
 しかし、今回は途中からバグのようなものが発生し、実際に痛みを感じるようになる。
 たかが眼鏡を掛けた程度では痛みまでは身体に感じないだろうというつっこみは置いておこう。この作品では描かれなかったが、たとえばログインが、もっと神経の中枢をプラグかなにかで共有させるような、マトリックスのようなものと考えればいいだけのはなしである。
 この作品の怖さは、我々がバーチャルだと思い込んでいるところに、リアルが突然入り込んでくることにある。それをなしえてしまったのが、ハーミットという存在だったわけだ。
 しかし、この作品はバーチャルとリアルという二つの対比項だけではなく、さらなる次元へと向かう。私が新しいなと思ったのが、このハーミットが実は病気で、自分のドナーをこのバーチャルの世界で見つけようとしていたことである。結論からいうと、一段落したあとで、主人公であるサクヤがドナー登録をするというところで話が終わっている。これはおもしろかった。
 つい最近臓器移植をテーマに扱った『私を離さないで』というグロテスクな映画を観たが、そこにも通ずる問題が横たわっていたと思う。
 が、ここでは単に、ドナー登録をして、何かの臓器を提供するということで、この物語は無事に終局を得そうだということである。全体としてじつによくまとまっているし、何の欠陥もないし、すばらしい作品であると思う。

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