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鉄人28号 白昼の残月 感想とレビュー

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 『鉄人28号 白昼の残月』(てつじんにじゅうはちごう はくちゅうのざんげつ)は、今川泰宏監督による横山光輝の漫画作品『鉄人28号』を劇場映画版アニメ化した作品。配給・宣伝はメディア・スーツ。2007年3月31日、新宿武蔵野館で公開。
Wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%89%84%E4%BA%BA28%E5%8F%B7_%E7%99%BD%E6%98%BC%E3%81%AE%E6%AE%8B%E6%9C%88

 鉄人28号といえば、横山光輝の名作と名高い。が、21世紀の現代若者の間では、もはやほとんど忘れ去られてしまったといってもいいだろう。私も、なんとなく名前は知っていたが、実際に作品を見たのは今回が初めてである。
 鉄人28号の漫画原作が掲載されていたのが1956年から 1966年である。この戦後十年というところから出発した作品は、やはり色濃く「戦後」というものをその作品に内包していたのである。現在私たちが、3・11後の文学作品等を考える際に、3・11文学といった考えかをするのと同じである。3・11しか経験していない私たちは、およそ敗戦、東京の焼け野原、というものを想像することは不可能である。おそらく3・11の数倍、いや数十倍、数百倍の規模の惨劇だったのだろうとしか想像がつかない。
 この作品は、アニメ映画として、2007年に制作されたものである。ちょうどこのころは、2005年に大ヒットした、『オールウェイズ三丁目の夕日』を含めた、昭和の魅力の再発見期とも重なっていると私は考える。日本語ブームなど、数年周期で訪れる一過性のブームがあるが、この昭和ブームというものも、周期的に訪れる一種の症状のようなものであろう。なんの症状かというと、今いきている現在に対して自信が持てなくなるときの症状である。我々は自分が現在おこなっていることが正しいのかわからなくなった際に、過去を持ち出してくる。過去を持ち出してそれを比較対象とするのである。それ自体には当然意味があり、これを無下に、よろしくないことだと一刀両断することはできない。人間そんなに強くないのであるから、時には懐古的になることもあろう。
 そのような時代的な文脈があるなかでこの作品もあったのではないかと私は考えるのである。ただ、それら一連のノスタルジー作品と比べて圧倒的にこの作品が優れていることは言うまでもない。

 特にすばらしいと感じたのは、作品全体に戦後の香りがきちんとしたというところである。絵のタッチも、2007年であるから、当然ものすごく描きこんだり、CG技術を駆使したりということはできたはずなのである。ところが、この作品ではそうした表現は見られない。もっぱら、戦後、まるでアトムを見ているかのような雰囲気の作品なのである。
 最後のエンディングも、なんと縦書きで、横に流れていくというものである。こうした細部までの徹底ぶりがこの作品を成立させている。極めて優秀な作品だと言えるだろう。

 ロボットアニメを沢山みてきたが、鉄人28号というのは、もちろんその後につらなる70,80年代のロボットアニメの元祖ともいえるものである。この時代はまだこれだけ巨大なロボットなのにもかかわらず、操縦者はロボットに乗り込まない。乗り込むことが圧倒的にスタンダードになってしまった現代においては、乗り込まないことのほうがむしろ新鮮に感じられるが、1950年代、60年代の想像力では、乗らないことのほうがむしろスタンダードなのである。
 この想像力からは、ロボットというものが、どのようなものかうかがえる。すなわち、現代ロボットにのることが当たり前となってしまった今となっては、ロボットを破壊することは、そこに乗っているパイロットをも殺すことにつながるのである。それは戦闘機を同士の戦いに似ているかもしれない。
 それに対して、外で操縦するだけであれば、ロボットを破壊したところで人はしなない。もちろん、これだけ巨大なロボットを操縦することになるので、周囲の人間を数多く間接的に殺していることにはなるのだが。だが、ここには、相手を殺すという観念はない。これは巨大なラジコン遊びのようなものなのである。
 だから、この作品には、本質的にはパイロットが殺される、死ぬという危機感、緊張感はないはずなのである。ところが、この作品では、パイロットを狙った別の事案が発生する。そしてそれがこの作品を動かしていくモチーフとなるわけである。

 今回初めて知ったことだが、この物語の主人公である金田正太郎は一応少年探偵なのである。この少年が、少年なのにもかかわらず、どうして車を運転できるのかは永遠の謎であるが・・・。というかそもそもこのロボットをいくら父親が作った兵器だからといって、人の生き死ににかかわることを少年にやらせている国家は一体どういう危機管理システムを持っているのか、と思わずにはいられないのだが・・・。まあ、そのようなことを言いだしたら作品は見られない。

 この作品はロボットアニメであるにもかかわらず、活人劇となっている。ショウタロウと言われる謎の少年がこの作品のカギを握っている。当初からなんとなく怪しい雰囲気を醸し出していたのであるが、やはりこのショウタロウが操縦かんを持っており、鉄人を裏で動かしていたのである。ということは、ショウタロウは廃墟兵器のありかを金田博士から聞いていたということであろう。
 残月というあだなを戦地で得た彼は、同じ残月を語る復員兵による犯行を追う。この復員兵は、最終的には管理人の女性であったことが判明するのだが、途中まではわからない。さすがに少年探偵を主人公にするだけはある。単純なロボットアニメでは終わらずに、コナンばりの謎を視聴者に要求してくるのである。なかなか知的にも楽しませる作品である。
しかし、この残月の名をかたる復員兵、管理人の女性の行動はやや理解しづらい。もちろん母親としての心情はよくわかる。戦後のことである。21世紀の現代から考えれば、最後にショウタロウに、日本のために立派に死んでくれるのが母としての望みだったのに、おめおめと生き戻って来て、というセリフはあまりにも残酷であるが、リアリティーを持っている。
だが、やはり彼女は同時に母なのである。それは生きて帰ってきた息子に対して頭ではあのようにつらくきびしくあたるものの、彼女と一緒にぼろぼろのアパートで暮らしていた時の二人はとても幸せそうであった。さらに、正太郎のことを殺ろうとしたのは、自分の息子に鉄人28号の主導権を渡したかったからにほかならない。ここでは、ショウタロウの母としてとともに、金田博士の女としての彼女もでてきているだろう。ショウタロウは、まぎれもなく、母残月と、金田博士との子どもである。それから金田博士は他の女性と結婚し、正太郎少年をもうけるのである。異母兄弟というのはこういう意味であろう。
 ここでは自分の愛した男と他が他の女との間につくった子供という感情が入り込む。これはなかなか複雑なものである。愛した夫が愛した人、というのは、愛していいのか、憎んだらいいのかよくわからないものである。そのなかで、彼女はショウタロウの母としての役割もあったので、正太郎を殺そう殺そうとするのであるが、やはりそれはできなかったのである。彼女は正太郎が小さい頃のショウタロウに似ていたからと述べている。すなわち、ここで母としての彼女が現れてしまったわけである。
 が、もしここでこの正太郎のことを殺してしまっていたら物語は悲劇的だ。もちろんそうなっては作品が終わってしまうのでそうはなりはしないのだが、しかしこの作品ではそれもありえるかもしれないといった、リアリズムがあった。

 最後に「白昼の残月」と書かれた書が数秒間描写される場面がある。これがなかなか恰好よかった。
 この物語は正太郎が太陽、陰陽でいったら陽の世界の人間なのに対して、その裏で活躍している人達のことを描写したかったという明確な目的を読み取ることができる。そして残月というのは、1人ではなく、二人だったというのも、この作品がよくできている作品の証拠である。
 1人の残月は、戦争でかろうじて生きながらえた、金田博士の息子。彼は戦地で金田博士とともに鉄人の開発と、その操縦技術を学ぶ。が、戦時中に鉄人は彼の手元から離れてしまう。
 もう一人の残月は傷痍軍人の恰好をし、暗殺をたくらんだショウタロウの母である。彼女もまた、金田博士に御前は残月のようだ。太陽が光っている中で、その輝きを反射し、かすかに光っていると言われた人物である。
 これは、近年のロボットアニメ批評にもなっている。ロボットアニメはいわば、陽の部分。絶対に死なない主人公しか描写していないのである。それに対してこの作品は、その陰で死んでいったヒーロー、ヒロインたちを描写しえているのである。そうした意味においても、この作品は十分なおもしろさ、設定、批評性を備えたすぐれた作品と言うことができるだろう。

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