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映画『夜のとばりの物語』 感想とレビュー 表現としての映像 影絵という技法

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はじめに
 2010年に入ってから、特にアニメーションやCGを使用した素晴らしい作品がいくつも発表されています。そのなかでも、2012年に発表されたミッシェル・オスロ監督の『夜のとばりの物語』は特に異彩を放っていました。映画館に行こうと思いつつ行けなかったのですが、先日DVDで鑑賞しました。
 予想通り、すごいと思うところもあれば、CMのワナで少しイメージしていた点と異なるところもあった。映像表現をメインに今回は論じていきます。

作品概説
 まず、この作品が一体何なのかというところから説明します。ひどくややこしかったのが、海外の映画作品ですから、日本の映画館で上映するにはどこの出資で行うかということになります。そして、良くも悪くも、ビッグネームのジブリからこの映画は支援されて映画館で上映することになったのです。ところが、普通の映画ならいざしらず、「ジブリ」という名前が出てきてしまったために、映画やアニメ映画に詳しくない人々にとっては、この映画もまたスタジオジブリ作品なのか?というあらぬ誤解を招きました。私も最初よくわかりませんでした。ただのスポンサーということであって、この映画の製作にスタジオジブリは一切関与していません。
 ただ、ジブリという名前がついたこともあって、劇場に足を運んだ人は多かったのではないでしょうか。ビッグネームは功罪両方を引き起こしますから注意しなければなりません。

 CMに限って言えば、これまら意味深長なCMを打ったため、ずいぶん恐ろしそうな雰囲気の作品だなと鑑賞する前は思いました。
「夜のとばりが下りる頃、愛はその深さを試される。 どれぐらい私が好き?」
 というのがキャッチコピーですが、女性の恐ろしさのようなものが垣間見られます。他にもタイトルからして、「夜のとばり」なんてあまりいいイメージを持たない言葉が出てくる。日本的なイメージだと、夜のとばりが降りて来た後は、魑魅魍魎が跋扈しそうなイメージです。人間ならざるものが出てきそうです。
 本編を見て見ますと、そんなにおそろしいものではない。もちろん、ところどころに怖い話はありますが、全体としてはもっと牧歌的な、民話的な優しい雰囲気に包まれていました。

表現として映像
 作品はいずれも短編。全体では84分の長さです。そのなかに6つの物語があるわけですから、ひとつ10分強。二時間ほどの映画が小説であるとすれば、この映画はまるで芥川龍之介の短編を読んでいるような感じでした。DVDに収録されていた監督のインタビューを見ると、より作品の理解が深まりますが、監督はそのなかで、彼が大きな長い物語ではなくて、小さくて短い物語を選ぶのには、短編には短編の良さがあるからだといいます。彼は、物語の長さから、どのように表現するかといった手法まで、ありとあらゆることを計算して作品を制作しているのです。
 6つある物語ですが、いずれも独立した短編。ですから、そのままいきなり入ってもいいわけです。しかし、そうしない。
 「夜な夜な好奇心旺盛な少年と少女が、古い映画館で映写技師と共に話を紡ぎ、6つの世界の主人公となる」
と、映画の紹介には公式サイトで書かれていますが、この映画は、メタフィクションを取り扱っているのです。どこかの映画館で少年と少女と映画技師がいる。この三人が、映写機を通して、どのような物語を演じて見ようかと相談します。ここは実に不思議で、映写をするのですから古い感じがしますが、同時に自分達の衣装や設定をするのには最新のパソコンのようなものが使われたりしていて、アンティークとテクノロジーが融合したような感じがします。
 私はここからも、すでにオスロ監督のユーモアを感じます。ユーモアというのは単に面白さとかそういうことではなくて、何と何をくっつけるのかとか、何に関連性を持たせるのかといったことです。


そして何といっても、影絵という手法。
 映画なり小説なり、作品を読み解く際には、「何が描かれているのか」と同時に「どのように描いているか」ということが重要になります。この作品は、しばしば物語内容だけに終始してしまう作品鑑賞を一端ストップさせ、どのように描いているかという表現手法を考えさせる素晴らしいテクストです。
 まずそもそも影絵という手法を選択したところがすごい。今の映画はコンピュータグラフィックス、CGが発達したために、表現はいかようにでもできるようになりました。ありもしないことが現実のように描ける。スターウォーズしかし、ロードオブザリングしかり。あんな世界はあるはずはありませんが、まるで現実のように表現できてしまいます。もちろんお金があればということになりますが。しかし、オスロ監督はその方向で表現をしようとは思わなかった。彼はインタビューでも述べていますが、影絵のシンプルさの力強さに惹かれたといいます。
 CG過多の現在の映像表現において、あえてかなり原初的な影絵を使用するということは、それ自体かなりセンセーションですし、またCG過多の表現に対する批評にもなっています。
公式サイトから少し引用しましょう。

 「オスロ監督は、自らの思い描いた作品の世界を実現するため、「アズールとアスマール」では3DCG の手法を取り入れ、本作では立体3D という新たな技術を前向きに取り入れています。影絵なのに3D と思われるかもしれませんが、オスロ監督の作品の世界観を3D 技術によって構築することは、彼がアニメーション作家として活動し始めた頃、紙と鋏を使って作っていた影絵の紙芝居の世界を、見事に劇場のスクリーン上に甦らせることを可能にしているのです」

 私は最初に、この映画にはそれぞれに導入があると述べました。映画館をまず映し、そこから物語の世界に入っていく。なので、私たち観客が見るのは、実際には私たちが見ている三人が演じている世界、メタフィクションなのです。
 そして、この映画館の場面においてはアンティークとテクノロジーが融合しているといいました。これは、映像のなかにも描かれていることですが、制作手法を見ると、まさしく監督自身がアンティークとテクノロジーの融合をしていることがわかります。影絵という、古典的な手法を使用しつつも、最新のテクノロジーを使用して、融合させている。新しいものを追い求めるだけの新しいもの好きでもなく、古いものに固執する懐古主義でもなく、オスロ監督は非常に柔和な思考の持ち主で、いいものはなんでもどんどん取り込んでしまうのです。ですから、ある意味で言えば日本人らしい。彼は日本のことがとても好きだそうで、この映画の上映会には、他の国でももちろん上映されているなか、特別に来日しています。他にも、彼は2011年に日本を襲った震災に心を痛めて、この映画が少しでもそうした人を癒せればと言っています。アニメーションにおいては、日本は最前線に立っていますから、当然オスロ監督も日本のアニメや文化を勉強しているはずです。そのため、どこか彼には日本らしさというものが感じられるようにも、私は思います。

オリエンタリズム批判
 手法は影絵という古典的な、古臭いものを使用していますが、しかし映像は鮮やかです。それは、先にもいったCGの使用もありますが、なんといっても色の使い方が絶妙なのだと思います。影絵ですから、当然人物たちは黒。目など一部分は白が使用されますが、基本的には黒です。しかし、この映画が観客を飽きさせないのは、背景がとても美しい。
主人公たちを黒というシンプルにすることによって、背景をかなり強めることができます。これが、どちらも色があることになるとごちゃごちゃしてしまう。背景はかなり強い原色が使用されます。青、赤、黄色、そして、それぞれを組み合わせてとてもエキゾイックな雰囲気を演出しているのです。
 ひとつの批評としては、6つの物語のうちの多くは東洋的であるということです。エジプトっぽい作品もいくつかありましたが、彼はこころのどこかで、西洋的な騎士物語よりも、オリエンタルな作風を好んだようです。私たちも、どちらかと言えば、日本らしい古い話よりも、西洋的な物語に興味を持つように、西洋的な環境で育った人にとっては、それ以外の情緒的な作品が好きなのです。「隣の芝生は青い」ではないですが、傾向として西洋っぽくはない物語が多いです。

 監督のインタビューで一番私が感銘を受けたのは、影絵という手法について、監督が考えていたこと。やはりこの手法を使用するということは、それだけ研究したということなのでしょうが、びっくりしました。彼が言うのはこうです。登場人物たちを影絵で黒にしてしまうと、肌の色が問題にならなくなるということ。これはびっくりしました。確かに、私はこの映画を見ている時に、この人達の肌は何色なのかなと思いもしませんでした。監督は、黒にすることによって敢えて刺激して、イメージさせることもできると言っています。
 これは鮮やかな手法です。肌の色で差別もしなければ、観客にイメージを喚起させることもできる。想像力豊かでない私は肌の色を想像するには至りませんでしたが、子供たちが見たらきっとさらに別な映画として映ることでしょう。
描かれている物語はオリエンタルチックなものが多いですが、しかし、肌の色がわからないため、絶対的な答えはありません。観客の想像によって、自分の近くで起きた物語ととってもいいのです。

おわりに
 夜のとばりの物語は2012年に公開されました。そしてその二作品目である、『夜のとばりの物語 ―醒めない夢―』は去年2013年の公開です。どちらもすでに劇場上映は終わり、DVDがレンタルできます。
 私はせっかく、スクリーンに映した映像を見ていると言う作品内の設定を活かして、この映画をスクリーンで観たかったものだとつくづく残念に思います。また続編があるようでしたら、是非劇場で観たいものです。

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