スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アニメーション映画『カラフル』 感想とレビュー 新しくいきること

o0300042211516545626.jpg


はじめに
 『カラフル』(Colorful)は、森絵都の小説『カラフル』を原作とするサンライズ制作のアニメ映画で、2010年8月21日より全国東宝系で公開されました。
 『カラフル』の原作は1998年、それを実写化した作品も2000年に公開されています。私は原作と実写をまだ見ていないのですが、それらを比べることによっても新しい発見があるように思われます。いずれ私もその比較をするかもしれませんが、今のところは他の方に譲りましょう。

自殺前の真少年の周辺
 何もわからぬまま、現世とあの世との中間地のような場所から始まる物語。そこで待ち構えていた灰色の髪をした天使のような少年、プラプラに当選したということを伝えられ、もう一度下界で生きるチャンスを貰います。
 自分が何者だったのかもわからない魂は、下界で自殺をした小林真という少年の体から魂が抜けると同時にそこに入り込み、半年間「修行」とよばれる訓練をするわけです。そこでの成績がよければ、もう一度新しい生を与えられるということになると説明を受けて物語は始まります。
 記憶もなにもないわけですから、突然小林真という少年の体に入った魂は、右も左もわからずに、日常を送っていきます。幸せそうに見えた家族は、実は様々な問題を抱えていたことが判明。どうして、小林真という少年が自分の命を絶たなければならなかったのか、という謎解きが始まります。
 この映画はアニメーション映画にしては長く、126分という大作。冒頭の魂は、観客と同じ状況で、なにもわかりません。突然物語が始まるのに合わせて観客も魂も何がなんだかわからないまま、一応世界に身を委ねてみます。そこで様々な問題があったことが判明します。
 主人公の小林真はクラスのなかで浮いていました。しかし、それが直接の自殺の理由ではない。彼が自殺しなければならなかったのは、彼が恋心を抱いていた後輩の桑原ひろかが見知らぬ男性と二子玉川のラブホテルに入っていくところをみてしまったからです。そして、呆然とする真少年は、その後そこから自分の母親がフラメンコ教室の講師と一緒にでてくるところを目撃します。自分の恋をしていた女性の援助交際と、自分の母親の不倫をみてしまい、真少年は自殺します。
 この映画のメインはなぜ真が自殺したのかということの謎解きの側面を持っています。冒頭でプラプラが自殺の原因を口頭では述べますが、このプラプラのいう事はすこし信用ならないところがあるので、実際に新しい真少年はこの身体の持ち主が何故自殺したのかということを追い求めて行くのです。
 その過程において、新しい真少年は、自分が誰だったのか、かつて何の罪を犯したのかということを探し求めることもします。メイン軸はその二つの謎を追い求めることに支えられていますが、その途中で、いくつかの要素があります。
ひとつは、真少年の恋。かつての記憶はもうないわけですから、どうやらかつて恋をしていたらしい、桑原ひろかともう一度恋をします。彼女との交流のなかで、彼は恋をもういちど体験することになります。
 もう一つは、友人の存在。真少年は自殺する前、友達は一人もいませんでした。しかし、新しい真少年は、自分の身体ではないことをいいことに、新しい生として日常生活を愉しみはじめます。そのなかで彼は、かつての自分というものを意識することなく、新しいキャラクターとして「自分」になっていくのです。それまでは冴えない身長の低い、クラスでは浮いた存在だったのが、髪を上げてみたり、恰好良いシューズを買ってみたりして、イメージチェンジをはかります。そのなかで、早乙女という人の良い友達と、佐野唱子という人が苦手そうなクラスメイトと交流していくわけです。
 しかし、一方でこうした新しい関係の構築があるものの、他方ではより深刻な関係の崩壊が描かれます。真少年は自分の母親ではないと思いつつも、不倫をしていたらしい母親のことがゆるせなく、彼女につめたくあたります。
 見ているこちらもどきっとするような、結構激しい言葉の暴力がある。真少年は、それまでの記憶がないはずなのにもかかわらず、不倫をしたらしい母親のことがどうしても許せないのです。

土地褒め、自分の居場所の探索
 この映画の盛り上がりは中盤、再びひろかが男性とホテルに入ろうとしているところを連れ出す場面にあります。そこではベースの効いたミュージックがバックで流れ、真少年の緊張を表します。しかし、ひろかを一端救出したかのように思えたものの、ひろかは自分の意志でホテルへと戻ってしまいます。これは、男性としてはかなりショック。やはり、自分の好きな人は純粋でいてほしいという願いは誰にでもあるものでしょう。これを自分の意志で戻られたからには真少年のやるせなさといったらないでしょう。
 中盤でヒロイン救出に失敗したヒーローは、その後早乙女という不思議な友人と、玉電めぐりをするなかで、再び立ち直ります。この映画の特徴は、最近のアニメに多い、リアリズムがあること。原作では、どこが舞台なのかということは明確にされていないようですが、最近のアニメは、なぜかある場所を舞台にしたがる傾向があります。『けいおん!』を代表とする京都アニメは京都近辺を舞台とし、京都の文化などに興味がない若者も、アニメの舞台となったからという理由で観光したりしているそうです。2011年の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』は、秩父市をモデルとし、大成功を収めました。こうしたアニメーションが現実にある場所を舞台にするというリアリズムのなかで、この作品もまた二子玉川園駅周辺を舞台としています。主人公の最寄り駅は等々力です。私事ですが、筆者も二子玉川駅にある別キャンパスに通ったことがあるので、ここらへんの風景はわかります。このアニメは二子玉川周辺の土地褒めをしつつ、玉電の歴史を振り返るという、ご当地アニメでもあるわけです。
 この土地をめぐる場面というのは、人によっては本筋からは離れるため退屈に思われるかもしれませんが、必要のない情報は描かれないという地点で考えてみると、真少年にとって最後の希望だったヒロインの救出失敗ですべてを失った彼は、土地をめぐることによって、自分の居場所を模索していたのかもしれません。そしてその自分の居場所を探す手伝いをしてくれた友人、これもまた人間関係においての自分の居場所を見つけるということになります。自分は居てもいいのだということをこの友人との交流を通じて自覚するわけです。

おわりに、自己を見付けるということ
 そして、自分の居場所を見つけた真は、こんどは自分のためではなく、ひろかのために救出をします。ひろかは、とても美しいものが好きだけれども、ときどき破壊衝動に駆られると、真の絵のまえで黒い絵具を握りしめて立っています。それに対して真は、人間はカラフルで、いろんな側面がある。だから、それはまったく不思議なことではないのだと言うのです。
 この映画のテーマはここにあります。人間はこうであるべきとか、このようなキャラクターであるとか、そういうことではない。人間はカラフルであるから、たまには緑色が強めにでてくるときもあれば、赤色が強めに出てくるときもある。しかし、その人は緑であるとか、赤でなければならないとかそういうことではないのです。早乙女君の人間として素晴らしい点は、佐野唱子がずばりと言い当てますが、「人を区別しない」こと。この映画の公開は2010年で、まだクラス内のいじめなどが問題化する以前でしたけれども、ここには早くもいじめについての描写が為されています。それがこの時としては精いっぱいの表現だったのでしょう。スクールカーストなどと呼ばれるものが、広く認知される前の、そのカーストの最も下、あるいはそこから排除された人々が真少年や早乙女君や、佐野唱子だったわけです。
 最後に真少年は、半年間の訓練を終えて、この世での生も終わるかもしれないということになりますが、そこはこの映画の少し調子のいいところ。実は真少年の体に戻ってきたのは、自分の魂だったのだということがわかり、それからも生き続けることになります。
 映画としては、かなり完成度が高く、とくに欠点らしいところはありません。まあ、しかしとても嫌な目で見れば、どうしてこれをアニメーションでやらなければならなかったのかなということはあります。かなり写実的で、リアリズムを追い求めた作品です。背景も写真のように綺麗。最近のアニメはどれもそうですが。しかし、それならば、せっかくアニメなのですから、別にどこかを舞台にしなくてもいいはずではあります。もちろん、最近は観客がうるさくなってきて、リアルでなければいやだという人が多くなってきているのかもしれませんが。
 しかし、アニメでなければ表現できないという場所も特になく、せっかくアニメで作ったからには、もっとアニメにしか表現できない部分を盛り込めばよかったのではないかなと、私は思いました。
 いい映画です。良すぎると言うのが欠点かもしれませんが。それから、登場人物たちがあまりにも泣いてしまうために、こちらのぶんの涙も流されてしまっているようで、少し残念。なぜか、映画のなかの人物が泣き始めると、いいところだったのに泣けなくなってしまうというのは、私個人の問題でしょうが。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

幽玄

Author:幽玄

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
247位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
17位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。