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映画 『ブレードランナー』 感想とレビュー 作品の影響関係とバージョンをめぐる解釈

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はじめに
 『ブレードランナー』(Blade Runner)1982年公開のアメリカ映画。フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(原題:Do androids dream of electric sheep?)を原作としています。
 アメリカでは70年から80年にかけて、SFブームが登場しています。そのなかで、1982年のこの映画が提示した「猥雑でアジア的な近未来世界のイメージ」は強烈なインパクトを与え、その後のSF作品や近未来を描く作品に大きく影響を及ぼしました。

スターウォーズとの比較
 私が調べた限りではまだ誰も指摘していないようですが、この影響を色濃く映しているのは、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)でしょう。そもそもこの『ブレードランナー』の主人公リック・デッカードは、『スター・ウォーズ』旧三部作の主人公の一人であるハン・ソロを演じたハリソン・フォードが演じています。
 ハリソン・フォードを起用するということは、すでにそこに『スター・ウォーズ』旧三部作からの何かしらの影響はあると考えたほうがよいでしょう。1982年の時点では、1977年のエピソード4と、1980年のエピソード5が公開されています。当時のSFブームもありますが、そのなかでも『スター・ウォーズ』シリーズはまた独立した強力なSF観を打ち出していましたので、その影響もこの映画に見られます。
 ですからこの映画は、スターウォーズからの影響を受け、さらにその後のスターウォーズに影響を与えたと言ってもいいでしょう。エピソードⅡの冒頭では、アジア的な猥雑した空間のなかで、オビワンとアナキンが賞金稼ぎを追います。ブレードランナーでも、デッカードが初めてレプリカントを殺す際に追跡シーンがあります。スターウォーズのあの場面はこのシーンへのオマージュと考えられるでしょう。他にも、エピソードⅡでは、オビワンが毒矢をめぐって、情報通のもとに行く場面がありますが、このブレードランナーでも、まさしく同じようなシーンがあります。この部分もスターウォーズがオマージュしたのでしょう。

バージョンの違い
 私は今回、公開25周年を記念して監督自らが監修したファイナル・カット版を鑑賞しました。この映画のおもしろいところは、他の映画作品では類をみない、5つものバージョンがあるということです。本来であれば、その5つをそれぞれ比較することによって、新しい発見もあることでしょうが、そのような大変な研究は他の方に譲ります。
 一応このファイナルカット版が、それまでのバージョンをほとんど網羅しているようなので、初めて見る場合には、このバージョンで鑑賞すればいいのではないでしょうか。

 ただ、重要なのが、バージョンによって解釈がわかれてしまうところがあるということです。ここを少し考える必要があります。この作品は、2019年が舞台設定となっており、そこには私たちの世界とは異なった世界になっています。「レプリカント」と呼ばれる人造人間が人類のために、宇宙の最前線で過酷な労役をしているという設定ですが、この人造人間、あまりにも人間に近づけて製造したために、数年間も使用していると人間と同じように感情を持ってしまうというのです。そうすると、人間への反逆をしかねないということで、自動的に死ぬように、4年という短い寿命が定められているのが重要な設定です。
 この物語は、そのレプリカントが宇宙戦内で人間を殺し、地球に戻ってきたというところから始まります。このレプリカントが人間に対して反抗するというのは、それまでにもあったらしく、人間に反抗したレプリカントを殺害するブレードランナーという職業が存在しています。主人公のディカードはこのブレードランナーだったわけです。しかし、現在はリタイアして生活していました。ところが、ネクサス6という、最新式のレプリカントも含まれており、普通のレプリカントの相手ではないということで、リタイアしていたものの腕の立つデッカードが再び呼び戻されます。
 この作品は制作時に様々な問題が発生したらしく、その最たるものは、レプリカントの数。6人逃亡したという設定の上、1人船内の戦闘中に死亡、4人がディカードの手によって殺されるということで、あとの1人は誰なのかという問題が発生したことです。制作陣はもう一人のレプリカントを撮影するつもりだったようですが、金銭や時間の都合でカット。6人というところを直さなかったので、鑑賞者の間で疑問になりました。ファイナルカット版では、6人中2人が船内で死亡ということで、つじつまが合うようにされています。
 しかし、このレプリカントの数の問題は、さらに新しい解釈を生み出しました。監督自身はまったく予期していなかったようですが、このディカードという謎の男が実は6人目のレプリカントなのではないかという解釈になったわけです。監督もその解釈を制作した後(撮影が一端終わったあともなんども撮り直しをしたため、制作中と言った方が正確かもしれません)に知り、さらに気に入ったとあって、ディカードを6人目のレプリカントに仕立てようとしたこともまた物議を醸しました。
 一端世に送り出した後も、撮り直しをし、ディカードが六人目のレプリカントであるかもしれないという解釈ができるような場面を付け加えたりしたわけです。ですから、ファイナルカット版では、一応逃亡したレプリカントは6人とも死んだということになりますが、ディカードがレプリカントであるかもしれないという可能性も残されるようになっています。

レイチェルとなぜ逃げるようにして終わるのか
 私が気になったのは、最後の場面。レイチェルについてです。レイチェルは最新式のレプリカントで、さらに人間に近づけるために「記憶」まで埋め込まれています。そのため、自分は本当に人間であると信じているのです。まったくおそろしい話で、私たちも記憶が埋め込まれたり、あるいは抜き取られたりしたら、なにがなんだかわからなくなります。人間にとっての記憶とは、その人を固定するものとしてとても大切なものなのだなと最近思います。
それはさており、しかし、レプリカントかどうかを判断する心理学のテストのようなものを受けて、レイチェルは自分がレプリカントかもしれないと思い始めます。最終的には彼女は自分がレプリカントであるということを知ります。
問題は、どうしてディカードがロイ・バッティと戦った後、レイチェルをつれて逃げなければならなかったのかということです。あるいは逃げるような描写になっていたのか。
 この映画では、警察署の幹部であり、ブレードランナーの統括者でもあるブライアントという人間がディカードの上司にあたります。そのブライアントのもとで働き、ディカードとの連絡をつとめるガフという警察官がいますが、こいつが曲者。まったく喋らないので、何を考えているのかわかりません。彼は折り紙を折るクセがあるのですが、これがキーポイント。ロイとの戦いを終えたディカードに対して、これですべては終わった、あの女も先が短いのが残念だと述べます。おそらくレイチェルのことを述べているのですが、もしやガフはレイチェルを殺したのか?とここで思えなくもない。ディカードは早く自宅に戻り、レイチェルが生きていることを確認する。そしてどこかへ逃げるように飛び出していくのですが、ディカードの部屋の前には、ガフが置いたと思われる折り紙がある。ここにガフが来ていたということになりますし、なぜディカードが逃げようとしているのかを考えると、今度はガフがレイチェルあるいはディカードを含めて、処分しようとしてきていると解釈できます。ここからもディカードがレプリカントであるかもしれないという解釈は成り立ちます。

終わりに
 しかし、何と言っても悲しいのは、ロイが最強のレプリカントだと言われていた割には、全然大した戦闘をしなかった、というか、ロイがまったくみずからは攻撃をしかけなかったということです。ロイは、同じレプリカントであるプリスをなんとか延命しようと地球に戻って来るのです。おそらく感情は未発達ですが、それは恋と呼ばれるようなものに類する感情でしょう。プリスも人を殺す術を心得ていると言われていたわりには、くるくる回転してちょこっと攻撃するというようなもの。とても殺人と呼べるようなものではありません。その大した攻撃もできないプリスを無残にも殺し、ロイにも攻撃を向けるディカードは、いくら処分しなければならないといっても、あまりに理不尽、不思議な行動に思われます。
 ロイに至っては、ほとんど攻撃してこない。すべてはディカードが攻撃してくるのをよけながら、徐々に追い詰めるというだけで、積極的な攻撃はしない。最後には、落ちそうになっているディカードを救い、死んでしまいますし、まったくディカードに対して殺すという明確な意志をもっていないのに、ディカードはロイを殺すのです。
 この映画を見ると、とてもレプリカントが悪で、ディカード、すなわち人間側が善とは言えません。むしろ反対です。人間の道具として作られて、しかもそこに感情がやどったら処分するというのは、なんとも人間の勝手です。
 アジア的な猥雑観を持った未来像を提示したというだけでも、映画史上においてチェックしておくべき作品です。映画の内容とは特に関係ありませんが、日本語もちらほらと聞こえてきます(もちろん英語版で)。SFの金字塔とも言われていますから、是非チェックしてみてください。

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