大2病という言葉と戦う 

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画像の引用はhttp://jiniusxjinius.seesaa.net/article/324336262.htmlさんから。

はじめに
 一時期Twitterで拡散された記事で、甚だ不快に感じた記事がありました。今回は、どうしてその記事が不快に感じたのか、自分の心と対話しつつ、論じてみたいと思います。
 最近特に感じるのは、ネットという匿名の空間のなかで非常に攻撃性が増していることです。だからネットはいけないと断罪しようなどとは思っていません。私は私なりのメディアリテラシーを有していますから、ネットが全て悪いなどと言う人はネットを使用していない人ぐらいだろうと思います。ネットは現に多くの人々に多大な利益も与えましたし、また、現在ネットという仮想空間のみが自分の居場所となっている心の弱い人もいるのです。そうした人たちからネットを奪うということはできません。
 今回問題にしたいのは、「大2病」という言葉。ならびにその背後に見え隠れする現代の攻撃性と、この記事の筆者の有するジェンダー規制です。ひとつひとつ丁寧に見て行きましょう。

大2病というレッテル
 大二病の女子にありがちなこと・7選
http://howcollect.jp/article/4120
 私が問題にしたいのはこの記事。この記事のリンクを掲載したツイートが最近よく見かけるようになりました。
 大2病という言葉をしらない方のために、少し説明しておきましょう。もちろんこんな言葉を知らない方が、いいと私は思っています。この言葉は新たな差別語ですから、この言葉を知ることによって、新しい差別の考えがその人の体の中に入ってきてしまうわけですから、知らないに越したことはありません。
 中二病という言葉はご存知の方も多いと思います。知らない方もいるかもしれませんが。中二病というのは、中学二年生時に多くの学生がかかる傾向といえばいいようなものを総称してこう述べたものです。中学二年生、14歳となると、新たな自我の目覚めが生じ、様々な人格が試行錯誤のうちで形成されます。この際に、自己の認識が過大になると起きることを中二病といっているのです。例えば、自分はどこかの国の王族だといった古典的でかわいいものから、自分は何かの能力を有している、いずれそれが開眼するといった妄想などが挙げられます。こうした妄想癖を持つことが中二病の代表的なものとして現在では認識されているようです。他にも、自分が特別だと思うことはこうした妄想にいかなくてもあることですし、別にそれほど特別なことではありません。数年間をかけて、自分はそんなに特別じゃなかったと段々通常の状態に戻っていきます。中学二年という最も変化の著しい時期の変化を指して、中二病と名付けたのが、ことの発端です。
 この中二病という言葉が市民権を獲得するようになると、この23年で新たに高2病、大2病といった言葉も生み出されました。中二病という言葉に便乗して作り出されたものです。それぞれ、高校2年生、大学2年生あたりで、見られる傾向を羅列的にあらわしてそれらに「高2病」「大2病」というレッテルを貼ったのです。
 高2病にもいろいろありますが、今回は大2病を主にテーマにしていきます。
 大2病と言われるもののなかには、なるほど、大学生ならしそうだなと思われるものが多々あります。

http://matome.naver.jp/odai/2134001017267391301
このサイトからいくつか引っ張ってきましょう。

講義さぼっちゃった自慢
突然カプチーノを飲み出す
美術館にやたら行きたがる。実際行ったら五分で飽きる
急にギャンブルを始める
タバコとか吸ってみちゃう
日本酒とか飲んでみちゃう


 どうでしょうか。筆者は大学生まっさかりなので、まあよく当てはまること。しかし、それぞれをひとつずつじっくりと読み説いていけば、果たしてこれが大2病と呼べるのかという疑問が生じるでしょう。
 私が一番問題にしたいのは、大2病という言葉のなかに、蔑みや嘲りの意識が垣間見れることです。私が今回この記事を書いたのは、そうした不当な蔑みや嘲りから自分達を守ることと、そうした攻撃をしている人に対して警鐘を鳴らすためです。
 確かに、こうした大2病のなかには、同世代の人間であっても、「この人イタイな」と思ってしまうようなことがあります。講義をさぼったことや、何日徹夜したとか、忙しいことなどをアピールしてくる人は見ているこちらが恥ずかしい。日本にはそうした見ているこちら側が恥ずかしくなるようなことを、「片腹痛し」という言葉で表現します。こうした古語が存在していることからも、日本人は相手の恥ずかしさというものを敏感に取ることができる文化を持っていることがわかります。
 確かに講義はさぼるでしょう。美術館にも行くし、喫茶店にも行く。お昼はちょっとおしゃれにパスタを食べる。ギャンブルをする。煙草を吸い始めるし、お酒も飲む。しかし、これらのどこが、果たして蔑視の対象になるのでしょうか。

垣間見られる攻撃性
 「中二病」「高二病」「大二病」といった言葉を盾にこれらを攻撃するのは、極めて卑怯なことだと言わなければなりません。なぜなら、それはこの言葉が示しているように、これら蔑視の対象となるものは、すべて病気なんだという前提から始まっているからです。
 しかも、現在我々日本が病気という言葉に対して抱くイメージは西洋的な医学の概念が強く、病気は悪いもの、無い方がいいもの、直すべきものという考えに繋がっていると思われます。これが東洋的な概念だと、病気はどこかバランスが崩れたしるしで、できれば直したほうがいいものであるけれど、それと共に生きていくという考えもないわけではないということになります。
 この言葉を使っている人間は、無意識かもしれませんが、これらを軽蔑しています。すべてのことに、美術館なんかにいって「馬鹿じゃないの」、お酒なんか飲んだりして「馬鹿じゃないの」といったように、嘲笑している感じが伝わってきます。
 人のことを馬鹿にすること自体も問題です。まず何かを馬鹿にした時には、なぜ自分はそのことを馬鹿にしたのだろうという自分の気持ちをよく見つめる必要があります。そういうように自分のこころを見つめられる人は次第に人の事を馬鹿にしなくなるはずです。馬鹿にする行為は確かに気持ちがいい。なぜなら、優越感に浸れるからです。こいつらを馬鹿にしているという行為のなかには、馬鹿にできるから立場が上だと感じられるものがあるのです。だから、小学生は、中二病をおそらく馬鹿にしませんし、高校生も大二病を馬鹿にしないでしょう。小学生にとっては中学生が上に思われるし、高校生にとっては大学生は上に思われるからです。
 百歩譲って人を馬鹿にするところまでは、なんとか許しましょう。本当はいけませんが。しかし、その上で考えるとさらに卑怯なことが判明します。人を馬鹿にする、あるいは攻撃する場合、それをする側の人間がきちんと自分の行為に責任を持っているのならば、まだ公平性があります。自分はこれこれこういう考えを持っている、その結果こういうことが言える、だからこれは間違いだ。こういう攻撃の仕方ならば、まだ許しようがある。きちんと自分がどういう立場から、ものを言っているのかもわかります。しかし、「中二病~」につづく言葉には、攻撃する側には絶対危険が及ばないような仕組みができているのです。
 これは現代のいじめにもつながる問題でもあると私は思っていますが、いままでのいじめというのは、まだ目に見えるものだったのです。ガキ大将や、意地悪っ子がいじわるをしたり、なぐったり。確かにこれも大きな問題ですが、しかしまだ目に見えるだけわかりやすいものだった。しかし、近年ではそれがどんどん陰湿になって、目に見えないものになった。ずるがしこくなったもので、決して担任の先生にはばれないようにやるのです。
 この「中二病~」に類する言葉もそれと同じです。ここにはあきらかにこの言葉を使用する側の嘲笑や、攻撃があるのにもかかわらず、その攻撃している側は絶対的に安全な立場から一方的に攻撃しているという構図が浮かび上がります。「~病」という言葉を使用することによって、「こんなことやっているお前たちばーか」という言葉を、「こんなことをやるのはその年代特有の悪いことだ!直さなければいけない」という正義にすり替えているのです。そこには、「病」という言葉が持つイメージを悪用していることがうかがえます。
 あるものを攻撃する場合、「これは駄目だ」と言えば、なぜ駄目なのか説明しなければいけなくなりますし、ダメだと言った側には責任が付きまといます。しかし、「これは病気だ」と言えば、なぜ病気なのかとなかなか咄嗟に考える人はいません。そうか病気なのか、じゃあ直さなければならないことなんだなと思うのがおちなのです。
 「~病」という言葉を使用して攻撃する人間は、自分が絶対に傷つかないようにしたうえで攻撃しているという、人間として極めて卑怯な行為をしているということをよくよく考えるべきでしょう。

ジェンダー規制
 この記事からいくつか例をとってみましょう。
 「今までの飲まなかったスターバックスが大好きになります。講義中も机の上に置いたり、新作を出るたびTwitterでトイカメラ風の加工を施した写真をつけてレビューを書いたりします。
 もちろん勉強もカフェで行います。実際は狭いテーブルでやるより、ファミレスでやったほうが捗りますが、勉強という何気ないこともオシャレカフェでやっちゃう自分ってステキ女子、と思っています。また、裏メニューや自己流トッピング自慢も通ぶりたい気持ちの表れ。ぱっつんボブ森ガール系に多いタイプです。」
 今まで高校生までの環境で、果たしてスターバックスのコーヒーを飲んでいた学生がいたでしょうか。日本の高校までの学校現場は非常に閉塞された空間で、かなり軍隊的な面があります。学校からは出ていけませんし、そのようななかでスターバックスを買う人間はいません。できることをして、何が悪いのでしょうか。確かに、トイカメラ風の写真をとってTwitterにアップロードする人もいます。しかし、なかにはかなり上手い写真もあり、一概に馬鹿にできるものではありません。

 「いかがでしたでしょうか?大二病は、素敵なキャンパスライフを送る上で大事な要素です。しかし、モテる女性でいるためには、サブカルに手を出してはいけません。スイーツを好きになってください。それができないから困っているんだろと言われてしまっては、仕方がないのですが。(白武ときお/ハウコレ)」

 この記事の最後にはこのような文言があります。同じネット上で表現をする人間として、よくもまあこのような記事が書けるものだと個人的には思っています。
 引用元のサイトはいずれも「モテる女子」を育成するという一貫したテーマをもって記事にしているように見られますが、しかし何よりも問題なのは、この記事の筆者、白武ときを氏が古典的な家父長制度の香りを残した思想を引きずっていることです。
 同サイトのライター紹介では、最後に
http://howcollect.jp/user/index/id/2936
「みんなが知りたいアレコレを、男性目線でご紹介していきたいと思っております。」
 という言葉が明記されています。この男性目線というのは、古典的家父長制度の視点と書き直した方がいいでしょう。この「男性にモテるという」言葉を使用して、あたかも女性の得になりそうな記事を書いていながら、その内実は男性の理想像を押し付けているだけという点が問題です。というのは、「サブカルに手を出してはいけません」といった行為を禁止することからも、強く伺えます。
 私の個人的な男性目線で言えば、私が女性を好きになることに関して、別にサブカルをしていようがしていまいが、特に問題はありません。あまりホモやBLといったものをしている人に近寄りたくないという気持ちはありますが、サブカル程度であれば、むしろ何かに夢中になっているということはとてもいいことだと思います。

 今回私がこの風潮に対して怒りの記事を書いたのは、ほかでもなく、この記事によって傷ついた女性が私の友人にいたからです。彼女はこの記事を読んで、これに当てはまっていない自分のことを考え、悩んでいました。だから、私はこのような家父長制度のおしつけを今でもする人間によって傷つけられるのはおかしい、不当であると思ったわけです。
 世の中には、まだまだこうした記事を読んで素直に受け取ってしまう人が沢山います。私の周りの、大学で高等な学問を受けている人間でさえ、こうした記事を真に受けてしまう人もいるのです。メディアに対するリテラシーがまだ発達段階にある多くの学生などにとっては、ネットの情報は予想以上に存在感を増すものです。ネットに書いてあったからという理由は彼等にとってはかなり大きなものなのです。
 私はこうしたジェンダー規制を蓑にまとい、さらにそれを「病気」という正義を盾にして言葉を発しているこの記事と、この筆者に対して非常に不快感を抱きました。この記事が「~病」というレッテルをはられ、苦しんでいる人のわずかな救いになればと思い、書き記します。

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こんにちは石野さん。

このエントリーを読んで思うことがありました。
SNSが一般的になってきましたが、おなじく実生活でも感じるのですが、さも自論が正しいという姿勢には疑問なんです。論じるということは石野さんのように自分の言葉に責任をもってはじめて成り立つのでしょう。

SNSにはネタで投稿している方が大半だと思うので、「ネタだから軽く流してね」というのが発信者のスタンスでしょうね。ぼくもそんな考えですが。
受け手側の耐性やスルースキルも求められると思う反面、発信する側として紛らわしい表現をしないことや物事を決めつけない柔軟性が求められるのだろうな、と思いました。

同じ偏屈として思うことを言ってくれてスッキリしました^^
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