スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

映画『rose』 感想とレビュー ローズの生き方に勇気をもらう・『おもひでぽろぽろ』との比較 

51JByuZdShL.jpg

 はじめに
 『かぐや姫の物語』を研究するにあたって、高畑監督の『おもひでぽろぽろ』を観たことからこちらの映画にたどり着きました。『おもひでぽろぽろ』のエンディングには、この映画『rose』のエンディングテーマである、「ローズ」が起用されています。私はこの曲を「おもひで」を観るまで知らなかったのですが、かなり有名な曲だったそう。私の親も知っていました。
 「おもひで」で起用された際には、高畑監督が和訳をし、それを都はるみが唄っています。私は「おもひで」の本編2時間は、最後のこの音楽を聴くためだけにあるといっても過言ではないと思っているほど、すばらしい音楽だと感じています。今回は、「おもひで」から入った『rose』について論じます。


 『ローズ』(原題:The Rose)は、1979年製作のアメリカ映画です。マーク・ライデル監督の作品。ヒロインのローズはジャニス・ジョプリンがモデルとなっているそうです。私はあまり音楽が詳しくないのですが、このジャニス・ジョプリンというのは伝説的な人物だそうで、ロック界を代表する歴史的な歌手だそうです。
 その知識がなかった私ですが、この映画はとても良い。今回、別に批評するということもありません。ただ、ただ良かった映画です。毒舌の私にしては珍しいかな。
 世の中には太宰的な破滅型の人間がいるものです。生きようとするのだけれど、不器用なのか上手くいかない。酒に薬に女に溺れ、命を散らしていく人間。ローズはその女性版と言えるでしょう。
 彼女は、大スターとして映画に登場します。ただ、その華々しいステージ上のパフォーマンスとは異なり、心身がかなり疲弊している。ライブ中にも酒を飲んだり、その言動はかなり見ていて痛々しいものがあります。
この映画がすごいなと思うのは、音楽表現。音楽に徹底的にこだわった高畑監督がこの映画のエンディングを何故使用したのかという点についても後ほど考えて行きたいと思いますが、この映画は、本当に栄華をみているのかと忘れさせるくらい音楽の表現がすばらしい。
 本当に彼女のライブを見に来てしまったかのような雰囲気に包ませるのです。私は残念ながらDVDで鑑賞しましたが、おそらく映画館で観ることができた人たちは、大画面で彼女のライブに行った心持で映画を鑑賞できたことでしょう。上映時間135分の中、この映画のサウンドトラックが40分強あるということは、いかにこの映画が音楽に時間を割いていたのかということの証明にもなるでしょう。
 ローズ扮するベッド・ミドラーの曲はロックということになりますが、「男が女を愛するとき(When a man loves a woman)」など、誰もが知っているナンバーも映画において起用されています。私は若い世代の人間ですから、この「男が女を愛するとき」も、1994年公開のアメリカ映画『男が女を愛する時』から知りました。それまでは、この映画でこの曲が有名になったのだろうと思っていたのですが、この曲はこの映画に起用される前から全世界的に知られた曲だったようです。もともとはパーシー・スレッジという黒人の歌。
 ベッド・ミドラーがカバーした「男が女を愛するとき」も1980年3月には全米35位に達したようで、かなりヒットしたようです。その後もこの曲は1991年にマイケル・ボルトンによってカヴァーされたことで、再び全世界的にヒットします。そののちの映画ということもあり、もはやこの曲は多くの人々が知るものになりました。こうした世界的に愛された曲というのは、様々なカヴァーがあり、そのどれもがすばらしく、いつまでも聴いていたくなるものです。

 CG技術が頻繁に使用されるようになる以前の映画が私は好きです。特にこの年代のアメリカ映画は、もちろん玉石混淆ですが、玉が多かったように思われます。そしてこの時代の映画が目指していたある部分で、映像と音楽のコラボレーションというのがあったように思われます。『トップガン』などは、アメリか映画の音楽と映像のコラボの最高峰の一つでしょう。映像と音楽がこれほどまで心地よくマッチした映画はほとんどない。『rose』は映像と音楽というコラボは目指していませんが、映画内に組み込まれた音楽が、素晴らしいのです。
 主役を演じたベッド・ミドラーは歌手であり、女優です。彼女の演技だけでも十分観るに値する映画です。本当にこの人は具合が悪いんじゃないかと心配するくらい、ローズという心身ぼろぼろの女性を見事に演じ切っています。そして、歌も上手い。歌手でもあるわけですから、安心して聴くことができます。
 こういう一部の特技を持った人間を描くのは難しいものです。例えばピアニストを主役などで出さなければならないときは、手だけを別の映像と移し替えたりする手法が多々取られますが、どうしてもそこには編集というメスがはいるわけで不自然になってしまいます。『のだめカンタービレ』の映画が素晴らしかったのは、上野樹里が本当に弾いているからです。もちろん音源はプロのものに変更されていますが、猛練習して弾いているのです。だからカメラワーク的にも不自然でない。
 日本のロボットアニメーションで、『トランスフォーマー』などに多大な影響を与えた『マクロス』は、音楽が作中の重要なファクターになりますが、このアニメでは、同じキャラクターに声優と歌手、それぞれ別人を起用しています。普通の会話の時は声優が、歌の場面は歌手が担当するわけです。私はその手法を知るまで同一人物が歌っているものだとばっかり思っていました。その不自然さのなさも神技ものだと思います。

 この映画の素晴らしい点は、なによりもベッド・ミドラーという素晴らしい女優に恵まれたことでしょう。ほとんどローズという架空の人物の最後の人生を映像化したものですから、ローズの映画と言っていい。
 彼女が薬と酒に溺れながらも最後まで生き抜いたその姿を見せつけられるわけです。内容もそんなに複雑なものではない。ただ、生きることに疲れながら、ぼろぼろになりながら、生きるその姿が観客にはとても勇気を与えるわけです。少なくとも私はこの映画にとても勇気をもらいました。あまり同じ映画を短期間で観ることはないのですが、この映画は数回見直してしまいました。音楽をメーンに聞きながら観たりすることもでき、何度も楽しめる映画です。


 『おもひでぽろぽろ』との比較検証
 さて、高畑監督がなぜ『おもひでぽろぽろ』のエンディングに『rose』のエンディングを起用したのでしょうか。文藝用語では、こうした他の作品を新しく作品の内部に取り入れることを「インターテクスチュアリティ」とか「間テクスト性」などと言います。簡単に言えば、ただ取り込んだということになりますが、その関係は何かあるのでしょうか。
 『おもひでぽろぽろ』もまた、音楽に非常に、異常にこだわりを見せた映画です。その時代の空気感というものを出すために当時の音楽をとても慎重に選んでいる。そうしたこだわりを見せる高畑監督がただ好きだからとか、制作中にたまたま聞いたからといった理由で持ってこないだろうと考えられます。その点、宮崎監督なんかは鈴木プロデューサーと感覚的に、制作する前にたまたまユーミンのライブに行ったからなんてことを言う人です。
 『rose』は、いわば太宰的な破滅的人間がぼろぼろになって、結局死という完全な終わりを迎えてしまう映画です。ものすごく悲しい映画です。この曲もかなり静かなメロディーですし、これを聞いてハッピーになったとはなかなか思えないでしょう。その曲を『おもひでぽろぽろ』のラストにも起用する。映画『rose』を踏まえているとすれば、やはり「おもひで」のラストも一つの死なのかもしれません。ただ、「おもひで」の死が何を指すのかということになると二つの解釈が成り立ちます。「おもひで」バッドエンディング説の論でいけば、27歳のタエ子の未来が終わりを告げるということになります。が、私は何故小学5年生の自分をつれてきてしまったのだろうという、タエ子の疑問を踏まえて、小学5年時のタエ子の死、過去との決別と読み取りたいです。

 作品とは関係ありませんが、あれだけのこだわりを持つ高畑監督の訳詩はあまりうまいとは言えないと個人的に感じています。


高畑勲訳詩
やさしさを 押し流す 愛 それは川
魂を 切り裂く 愛 それはナイフ
とめどない 渇きが 愛だと いうけれど
愛は花 生命の花 君は その種子
挫けるのを 恐れて 躍らない きみのこころ 醒めるのを 恐れて
チャンス逃す きみの夢 奪われるのが 嫌さに
与えない こころ 死ぬのを 恐れて 生きることが 出来ない
長い夜 ただひとり 遠い道 ただひとり
愛なんて 来やしない そう おもうときには
思い出してごらん 冬 雪に 埋もれていても
種子は春 おひさまの 愛で 花ひらく





"The Rose”

Some say love, it is a river, that drowns the tender reed
Some say love, it is a razor, that leaves your soul to bleed
Some say love, it is a hunger, an endless aching need
I say love, it is a flower, and you, its only seed
Its the heart afraid of breaking, that never learns to dance
Its the dream afraid of waking, that never takes the chance
Its the one who wont be taken, the one who can't seem to give
And the soul afraid of dying, that never learns to live
When the night has been too lonely and the road has been too long
And you think that love is only for the lucky and the strong
Just remember that in the winter, far beneath the bitter snow
Lies the seed, that with the sun's love in the spring becomes the rose.


http://www.maria-angels.jp/a-blog/index.php?ID=58よりミュゲさんの訳詩
愛、それは川、若い葦を沈めてしまう川、という人もいる
愛、それはカミソリ、あなたの心を切り血を出させてしまうカミソリ、
という人もいる
愛、それは渇望、永遠に求め続けるもの、という人もいる
私は
愛、それは花、そしてあなた、その唯一の種
私はそう思う
傷つくのを恐れていては 決して踊ることはできない
目覚めることを恐れている夢、そんな夢は決してチャンスを
つかむことはできない
愛を与えることができない人は 愛を受け取ることも決してない
死ぬことを恐れていては 決して生きるということを学べない
夜がとても寂しくて、道がとても長く感じるとき
愛は幸運で強い人だけのものに思えるとき
これだけは覚えておいて
冬 深い雪の下に眠っていたその種は
春 太陽の愛をうけて バラの花を咲かせることを


 ネットの便利なところは、英語など他の言語にある程度教養のある方が、それぞれ独自に訳詩をして、それをアップロードしている点ですね。もちろん玉石混交ですから、良いものも悪いものもありますが、比較対象があるということは便利なことがあります。
 高畑監督の訳詩は、私が言っているセリフなのか、人が言っているセリフなのかがわかりにくい。かなり丁寧に読み込まないとそれがわかりません。日本語は一語一語を発音する言語なので、英語の音程に合わせて唄うと多くなってしまいます。ですから、英語の歌詞を訳そうとすると、かなり削らなければならなくなる。原文により忠実に訳した下の歌詞は意味は通じますが、これをメロディーに合わせようとするとかなり難しくなる。収まりません。そこが難しいところです。
 ただ、都はるみのカヴァーもまた素晴らしいカヴァーの一つです。「Rose」はこの映画公開から、独り歩きして世界的にも有名な曲となりました。多くの歌手もカヴァーしています。それぞれすばらしい。都はるみの歌は、彼女のもつ優しい雰囲気に包まれており、ミドラーの曲の力強さよりも優しさが全面に押し出ているように感じられます。
 他に比較対象に挙げるとすれば、手嶌葵の「rose」。彼女は宮崎駿監督の息子である宮崎吾朗の監督した映画、『ゲド戦記』で見事「テルーの歌」を歌い一躍有名になりました。残念ながらメディアではその後あまり活躍している様子がうかがえませんが、私は個人的に彼女の歌が大好きです。というのは、彼女には最近の没個性的な、質より量のアイドルたちの歌と違って、彼女にしか唄えない、パーソナリティーやオリジナリティーを感じるからです。そんな彼女は、Wikipediaによれば、中学時代不登校に近い状況になったそうですが、その彼女を支えてくれたのは「rose」だったと述べており、彼女にとって「rose」は特別な曲だそうです。この手嶌バージョンの「rose」も、人間の愛憎こもごもの深みを感じさせる名曲だと思います。

コメントの投稿

非公開コメント

こんばんは

素晴らしい歌でした。ありがとうございました。

Re: こんばんは

hajime さんご無沙汰しております。いい曲ですよね。ほんとうにいい曲。
プロフィール

幽玄

Author:幽玄

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
227位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
16位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。