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閑崎ひで佳 地唄舞 感想 女性が演じる女性の美



 昨年は例年に比べて日本の伝統的な文芸に多く触れることができました。昨年11月のことになりましたが、地唄舞というのを初体験してきました。
 夏には歌舞伎を見て、男性が演じる女性の美しさというものを見て、秋には宝塚に行って女性が演じる男性をみたところでした。歌舞伎、宝塚を観て感じたのは、やはり宝塚のやる男役、歌舞伎役者(特に好きなのは坂東玉三郎)のやる女型、のすごさです。女がやる男、男がやる女にこそ、それぞれの理想が反映されているので、素晴らしいんですね。これが片方だけだと卑怯です。ファム・ファタール、宿命の女と訳される神秘的な女性について文学的な視点から考察するというのが私の文学の専門ジャンルなのですが、神秘的な女性の像が男性によってつくり続けられてきたことは、女性にとってはかなり重い負担だったというのがジェンダー的な研究によって明らかにされてきました。個人で勝手に女性に神秘的な、神格的なものを求めるのはいいのですが、それがいきすぎると、神秘的でない女性は駄目だとかそういう差別につながってしまう。現代でもまだ人間は異性に理想を追い求め続けていますが、女性側も男性の理想を提示できるようになったので、少しは差別が解消されたかなという感じもします。
 宝塚に私は行ってきましたが、やはりなんだか恥ずかしい。と同時に、格好いいなと男でも思いました。特に私が昨年見た宝塚は「風と共に去りぬ」でしたから、ただでさえ恰好良いレット・バトラーは、さらに女性による視点で神レベルの恰好よさに昇華されていました。
 昨年はこのように男性から見た女性、女性から見た男性というのを考えていたのですが、冬に見た地唄舞で少し考えが変わりました。地唄舞は女性が女性のまま、演じるものです。それを見て女がやる女は、別のベクトルですごいと感じました。

 地唄舞というのは、芸者さんの舞に少し手を加えたものなのだそうです。だから本来大きな舞台でやるものではありません。御座敷芸です。日本の伝統文藝、歌舞伎、能、狂言を見て来た一年でしたが、それとはまた異なった不思議な世界でした。



 出典を忘れてしまったのですが、外人の作家か何かの人がこんなことを言っていたと記憶しています。「円熟した女性の美しさを見れるのは人生における素晴らしいことである」と言った内容です。
 大変失礼なことを言ってしまえば、閑崎さんはそれは私のような成人なり立てというわけにはいきません。立派な大人です。ですから肉体的な若さというものの美しさはない。よくしょうもないおじさんたちが若い女性にたかっているのを見るとなんだかなと思います。女性の美しさは肉体的な若さだけにあるのではないのです。この地唄舞を見てはっきりとそう思いました。
 閑崎先生は私の二倍くらいの年齢の方だろうが、おしろいを塗った姿は本当に美しいものでした。女性が女性らしさを洗練させたらどうなるのかということをまざまざと見せつけられた感じです。
 文芸や伝統など、時間や労力がかかるものが何故あるのかという一つの問いとしては、こういうことが言えるのではないかと感じました。すなわち、文芸や伝統がなければ、ただの腕っ節の強い男、肉体的に若い女性だけが素晴らしいものだという実に動物的な観点からしかものがみれなくなってしまう。だから、なにごとをか洗練することによって新しい、別の美しさや価値観というものを見出していくことが必要になるのだと思います。

 今回の地唄舞、おそらく私が一番若い観客でした。周りを見渡せばじじばばばっかりです。しかも嬉しいことに、30歳未満無料というすごい特典がついている!これを逃す手はないと思って私は言ったのですが、最近の若い人、私の友人でも、タダだからと言ってもなかなか地唄舞を観に行こうと思う人間はなかなかいませんね。とても残念なことです。まあ、そのためか、一人だけ若い私は目立ったのでしょう。心なしか閑崎ひで佳さん、舞をしながら私の方をよく見てくれている気がしました。かなりどきどきしました。本来は御座敷芸ですが、小ホールで演じられたため、私と閑崎先生の距離は何メートルも離れていました。ですが、こちらに多く視線を送ってくださったのではないかと思います。
 人間を生物学的な視点からみたら、人間は生殖機能がなくなったらあまり存在している意味がないとか。しかし、やはりそれはおかしい考え方でしょう。人間はたとえ若さによる美を失ったとしても、時をかけて丁寧に訓練した技があれば、すごく美しいものを持てるのです。今回はその人間ならではの美、伝統のなかにある美というものに触れました。唄に合わせて舞うという単純なことですが、その単純さのなかに物凄く複雑な様々な感情の機微が隠れていて素晴らしい。全く知識もありませんでしたが、とても面白く鑑賞させていただきました。本来であれば京都の高い、一見さんお断りのようなところで、いいおじさんにならないと観られないものをただで見てしまえたのですから、ずいぶん得をしたものです。
 これからの閑崎さんの演目も、おそらく30歳未満は無料で行われると思いますから、是非足を運びたいと思います。

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