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2013年 日展の鑑賞 感想とレビュー 書の力

 ここ三四年、日展には毎年足を運んできた。今までは、美術をしている関係から、西洋画、日本画、工芸などに注目してきた。国立新美術館の構造上、書の展示部に着いた頃には体力を消耗し、ほとんど書には注意してこなかった。
 今回は、前期に鑑賞した毎日書道展との違いに着目してみるとよいという指摘のもと、日展の書を鑑賞した。結論から言うと、私は毎日書道展の方が好きだ。私は美術をしてきた人間であるから、書も美術的な面白さがあった方が良い。裏返して言えば、書については素人なので、技術を競っている日展のような真面目な展示はよくわからない。毎日書道展と日展を比較することによって、様々なことが分かった。毎日書道展はかなり自由な書風が多く、前衛的な作品が目立った。墨をまき散らしただけといったような、一見すると誰にでもできそうな作品もあった。それはそれでなかなか絵画的で面白いので私は好きだ。それに対して、日展の書は真面目で、格調高い感じがする。毎日書道展にあった工芸の技術を取り入れた作品や前衛的な作品は、日本画や工芸部門に出されている。そのため、日展の書は、まさしく書といった雰囲気が漂った感じである。
 文字で書かれた作品を見ても、毎日書道展は和様の書が多かったように見受けられた。連綿の作品や、また現代書も多かった。それに対して日展は、古典に習っているという感じがした。会場全体の雰囲気も堅い。柔らかい文字ではなく、中国式の角ばった文字が目につく。全体の感想は、ただただ素晴らしい書なのだなと感じたのみ。絵画的な面白さも少なく、私にとっては少々難しい展示だった。日展の書は、いずれも相当な技術があるとわかるものばかり。そのなかで優劣はつけがたい。ましてや素人の私にはまったくわからない。なので、今回は書の力という視点を設定して論じてみたい。
どの作品も技術的には素晴らしいものなので、微妙な差異はわからない。なので、私は書に現れてくる筆の力について考えてみたい。先ず書で力と考えると、どこかのお寺の門にかかっていそうな仰々しい文字が頭に浮かぶ。それほど仰々しくなくて、美しくまとまった端正な素晴らしいさを感じたのは、星弘道氏の「臨池妙墨」。
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 荒々しい筆脈であるが、その溢れ出る力を上手く制御できている。筆が通ったかすれた線が見事である。ただ、荒々しい書というのは、確かにこのような会場においては目を見張る。だが、その作品をよくみてもそこから発展がない。この書は荒々しくはあるが、それを制御する力によって、見事な書になっている。

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 市澤静山氏の「神采」になると、やや力任せという感が出て、それを統御せしめた作者の力量が伝わってこないように感じる。

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 もう一つ、日展にしては珍しい大きな文字の書で、横山夕葉氏の「霊妙」を取り上げる。水を多く含んだ淡墨で、周りに広がっていく水の跡が中国の岩だった山奥の風景を連想させる。この「霊」という字がかすれゆく淡さと、芯のある山の両面を持った字になっており、柔らかさと強さ、両方を体現した書であると言える。

 次は先に取り上げた書より少し小さめの書。特選の尾西正成氏の「風起こる」。一字一字は荒々しいが、それを綺麗に配置することによって暴力的な要素が上手く抑えられている。特に中央の「神」一時が全体を引き締めているように感じられ、緊張感ある躍動的な書と言える。
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 これまではいずれも中国式の角ばった字だった。今度は和様の柔らかさと力強さの調和を観たい。取り上げるのは、加藤大翔「秋の夕暮れ」、江田弄月「島崎藤村の詩」、金谷雷聲「未央柳」。いずれも漢字仮名交じりの書である。「秋の夕暮れ」は堂々とした筆脈のなかに、真っ赤に燃える大きな太陽の力強さを感じさせる。字形も整った書である。「島崎藤村の詩」はやや向勢の書で顔真卿を思わせる落ち着いた書である。一字一字をしっかりと力を込めて書いている。「未央柳」は、前二作に比べてやや奔放な感じ。風にたなびいている感じのする力強い書である。ただ、やや左右にぶれている感が否めない。これらの書はいずれも、力強さを内に込めた作品で、どれも見事な書であると言えるだろう。
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 比較対象のため、力を抜いた書も挙げる。加藤東陽「王維詩」。淡い墨で流れるように紙面をすべる。脱力という点においてはこの書は極めてレベルの高い書だと感じる。しかし、ただ力を抜けばいいのかというとそうではない。遠藤栄久「夏目漱石の詩より」は「王維詩」に似た書風ではあるが、ただ脱力したというだけで、筆脈も左右上下に飛び放題で、中心となる軸が感じられない。小学校のころ嗜んだ程度だが、力を抜いた技、無構えの構えというのが剣道では強いと聞く。書においても、力を込めるのはもちろん難しいことだが、力を抜くのはより難しいのではないだろうか。この書は力を抜いている分、その作者の力量が問われると思う。
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最期に、今回の展示で私が最も素晴らしいと感じた作品。奥江晴紀「秋の暮」。堅苦しい雰囲気のなか、この書は紙にも美しい他では見られない独自のものを使用しており、美術的な視点から見ても素晴らしい書であった。筆は細く、柳のような趣である。やや硬くなっている感もあるが、芯のあるしっかりとした線である。レポートに不適切な表現をさせて頂けば、書の細マッチョといったところだろう。しなやかさの中にも力強さがある。この境地が私にとっては最も美しく感じる書の力強さである。
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