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『時をかける少女』論  ―1― 表象の系譜


-初めに-
 筒井康隆の『時をかける少女』は、1967年に刊行されました。『時をかける少女』は日本の文芸史上、多様なメディア展開を今なお続けており、メディアやメディアにおける少女論のようなものを如実に表している非常に稀有な作品であると感じ、これを考えます。
 1967年刊行ですから、すでに半世紀が経とうとしています。やく50年前の作品にして、いまだに新しく映画化されるなど、現在でも形を変えて表象され続けているのです。ここでは、この『時をかける少女』がどのように表象されてきたのかの、一端を考えて行きたいと思います。

-ジュブナイルというジャンル-
 先ずはジャンルから。『時をかける少女』は、ジュブナイル小説というジャンルに属すると考えられてきました。このジュブナイルとはそもそも何なのか、これをまず考えて行きたいと思います。「小説の一種を呼ぶための日本での呼称。英語では young adult fiction やjuvenile novelあるいはjuvenile fictionと呼ぶ」とWikipediaにあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%96%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%AB
 「「juvenile」の本来の意味は「少年期」」で「児童あるいはヤングアダルト向けジャンルの呼称として使われてい」ます。対象となるのは、児童文学と成人向けの作品との中間に位置し、ティーンエイジャーが最初の読者対象となったようです。このようなジャンルは、海外には存在せず、ジャンル分けが好きな日本独自のジャンルと考えた方がよさそうです。
 しかし、70年代から90年代にかけて、徐々にこのジュブナイルというジャンルが、ヤングアダルトという名称に変化しました。そして、さらに時代が下ると、ライトノベルという名称がこれにとってかわります。専門家によって、これらは別々のジャンルだという主張もありますが、私は一応同一線上のものと捉えて考えています。ですから、御幣を恐れずに言えば、『時をかける少女』は約50年前のライトノベルと言ってもいいと思います。

-メディア展開-
 次に原作を始点として、『時をかける少女』がどのように他メディアに展開していったのかを先ず羅列してみます。

テレビドラマシリーズ
・1972年 『タイムトラベラー』『続 タイムトラベラー』(NHK少年ドラマシリーズ) 主演:島田淳子
 NHKの少年少女向けテレビドラマ枠『少年ドラマシリーズ』の第一弾として、初映像化。
 続編は筒井原作とクレジットされているが、実際は正編に続いて脚本を担当した石山透によるオリジナルストーリー。1978年、石山のノベライズが鶴書房盛光社刊。2011年、復刊ドットコムより再刊。
・1985年 『時をかける少女』(フジテレビ単発ドラマ、「月曜ドラマランド」) 主演:南野陽子
・1994年 『時をかける少女』(フジテレビ「ボクたちのドラマシリーズ」) 主演:内田有 紀
 原作者の筒井が住職役でレギュラー出演している。
 チーフディレクターには『世にも奇妙な物語』シリーズなど多数を監督している落合正幸が起用された。
・2002年 『時をかける少女』(TBS単発オムニバス「モーニング娘。新春! LOVEストーリーズ」内の一篇) 主演: 安倍なつみ


映画化作品
・1983年 『時をかける少女』((旧)角川春樹事務所) 主演:原田知世、監督:大林宣彦
 原田知世主演による大ヒット映画。大林監督の代表作「尾道三部作」の一つと数えられる。
 出演:尾美としのり、岸部一徳、根岸季衣、高林陽一、上原謙、入江たか子、高柳良一

・1997年 『時をかける少女』((新)角川春樹事務所) 主演:中本奈奈、監督:角川春樹
 大林版をプロデュースした元角川書店社長の角川春樹が自ら監督として制作。制作に角川書店は一切関わってお らず、大々的な宣伝を打つことも無く公開されたため、存在自体を知らない人も多い“幻の作品”。
 原田知世がナレーションを担当している。白黒作品。また、主題歌「時のカンツォーネ」は、かつて、松任谷由 実が、原田知世主演映画に提供した楽曲「時をかける少女」を、自身の手で、歌詞は変えずに、新たにメロディ をつけたもので、松任谷由実自身が歌っている。
 出演:野村宏伸、伊武雅刀、中村俊介、早見優、久我美子、浜谷真理子、榎木孝明、渡瀬恒彦、山村五美、倍賞 美津子

・2006年 『時をかける少女』(アニメ映画)製作:「時をかける少女」製作委員会、配給:角川ヘラルド映画、監 督:細田守
 大林版実写映画の約20年後、2006年を舞台とした新たな物語。主人公の紺野真琴は、芳山和子の姪の設定である。
 原作者の筒井も本作を、「本当の意味での二代目」と語っている。
 声の出演:仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、原沙知絵、谷村美月、垣内彩未、関戸優希

・2010年 『時をかける少女』 製作:映画「時をかける少女」製作委員会、監督:谷口正    晃
 出演:仲里依紗、中尾明慶、安田成美、勝村政信、石丸幹二、青木崇高

漫画
・1984年 タイムトラベラー 別冊アニメージュ『SF&FANTASYリュウ』(徳間書店)で連載。作画・早坂未紀。
 ストーリーは、ドラマ「続 タイムトラベラー」を、時代設定を80年代に置き換えたものだが、3回の連載にまと めるため、一部のストーリーが、割愛されている。未単行本化。
・2004年 月刊少年エース増刊『エース特濃』(角川書店)で連載。作画・ツガノガク。
 ストーリーは原作にほぼ忠実だが、時代設定は21世紀初頭に置き換えられている。
・2006年 時をかける少女 -TOKIKAKE- 『月刊少年エース』で連載。作画・琴音らんまる
 アニメ映画版の漫画化。
・2009年 時をかける少女 after 『ヤングエース』で連載。作画・橋口みのる
・2010年映画版の漫画化。

以上Wikipediaより引用
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%82%E3%82%92%E3%81%8B%E3%81%91%E3%82%8B%E5%B0%91%E5%A5%B3

-表象の系譜-


 最も早く、『時をかける少女』がメディア媒体を変えて作り直されたのは、NHK少年ドラマシリーズで放送された1972年の 『タイムトラベラー』と『続 タイムトラベラー』です。続という名がつくドラマが後を追うようにして放送されているということが、当時の人気ぶりをうかがわせます。
この作品に限っては、タイトルを原作のまま使用するのではなくて、タイムトラベラーと名称を変更しています。また、原作を筒井康隆とはしているものの、その内容は脚本家が独自の解釈を入れてつくったものであり、原作にインスピレーションを受けて二次創作した作品と捉える方がより実際的だと思います。
また、『時をかける少女』は、それぞれの年代によって受け取り方が異なります。現在の50代、前後の方は、この原作とこの72年のドラマ作品が、『時をかける少女』象に最も近いのではないでしょうか。



img_763860_32596033_1.jpg
 次にこの作品を原作として作られた作品で、最も有名な作品が登場します。1983年に(旧)角川春樹事務所から公開された映画 『時をかける少女』です。主演を原田知世が演じ、音楽を松任谷由実が担当し、有名な『時をかける少女』の楽曲が創られました。

 現在の40代くらいの世代の方にとっては、この映画が世代全体の『時をかける少女』象になっているのではないでしょうか。
 その後の映像化作品は、この映画にはとても及ばず、またこの映画に追随したような感じで映像化がなされたため、あまり注目するにはあたらないと私は思います。40代くらいの世代にとっては、原田知世以外には、1985年の 『時をかける少女』(フジテレビ単発ドラマ、「月曜ドラマランド」) で主演の南野陽子が、『時をかける少女』象としてもう一人浮かび上がってくる程度でしょうか。


20080725212018.jpg

 さて、時代が下ると、こうした長い期間メディア媒体を変容させつつ生き残ってきた作品がどう変化するのか、それをよく表したのがこの作品化でしょう。私を含め、20代前後の世代にとっての『時をかける少女』象とは、細田守のアニメーション映画にほかなりません。
 2006年には細田守監督がアニメーションで映画化をした 『時をかける少女』が登場します。
「大林版実写映画の約20年後、2006年を舞台とした新たな物語」という設定で、主人公の紺野真琴は、芳山和子の姪のにあたると、作中に言及されます。原作では、芳山和子には、妹たちが居るという文章があります。ですから、その妹たちのだれか一人の娘ということになるのです。原作をアニメーションだけにするのでは、すでに40年近くの差がありました。その差を埋めるためには、大ヒットした83年の映画のさらに次の世代を描くことによって、現代の人間が見ても問題のない映画にしたのです。
 ここで面白いのは、その時代時代の時をかける少女が、どんな部活をしているのかという点です。83年の映画では、芳山和子は弓道をしています。原作では部活の描写はないのですが、映画化するに際して、より細部を描き、リアリズムを付加するという点で、それぞれ少女は部活動をしています。83年には弓道だったのが、この細田守のアニメーションでは、部活ではないのですがキャッチボールをしている場面が描かれます。何か特定の部活に所属せず、空き地で男子の友人とキャッチボールをするという自由に溢れた感じも、時代を表象しているとも言えるでしょう。このようにして、時をかける少女の少女像というのは、常に変化しつづけており、そうした意味でも「時をかけ」つづけていると言えると私は思います。

 
original.jpg

 現代に入ってからの時をかける少女には、さらに別の視点からみると、またずっとおもしろくなる点があります。2006年のアニメ映画の大ヒットの後、2010年には再び、実写で『時をかける少女』が制作されます。 この作品の主人公は芳山和子の娘という設定で、アニメ版の主人公の声を務めた仲里依紗が演じています。2006年のアニメでは、細田守監督は声優ではなく、まだ新人に近かった仲里依紗を起用しています。この声優でない人間からの起用というのは、少しジブリ映画を踏襲した感じが残ると思います。
 ですが、実際に見ていると、仲里依紗の演技はとてもうまく、作品を成功させていたと言えるでしょう。その2006年の時をかける少女を演じた仲里依紗が、今回は実写、女優として演じるのです。記憶を消されたはずの芳山和子は、しかし、どこかで覚えていたのか、薬学の研究をしていてついにクロッカス・ジルヴィウスを完成させます。その娘である芳山あかりがふとしたことから、母がつくった薬を嗅ぎ、過去にタイムリープしてしまうという話なのです。しかも、現実のレベルにおいては、ここで共演した仲里依紗と中尾明慶は、その後関係が続き、先日ついにめでたく結婚に至っています。
 このようにしてみると、島田淳子、原田知世、南野陽子、仲里依紗といったように、つぎつぎと時をかける少女の少女像というものが浮かび上がってくるのではないでしょうか。今後も『時をかける少女』は、さらに時代を変え、ヒロインを変えて語り継がれることでしょう。そうした意味でも、『時をかける少女』は、いまだに時をかけつづけているのです。

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時をかける少女、懐かしい。
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