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映画『Ted』試論 感想とレビュー 27年の悪友か4年の彼女か。汚い友情を描く

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-初めに-
 もっと早くにかけばよかったのですが、遅筆になってしまいました。前回は『アリス・イン・ワンダーランド』という頭がいかれた作品を取り上げたので、その連続として、今年もっともぶっとんだ作品を論じます。ここ10年は、私が注目している大きなアイドル像が解体されてきていて、実に多様な人物が主人公になることが出来る時代になってきています。これは、日本のことだけかと思っていたのですが、どうやら全世界的にも、今までの大きなアイドル、大きなヒーローの象は解体されてきているようです。多様化したと考えることができるでしょう。
 しかし、この作品がその多様化された時代でも異彩を放つのは、テディベアが本当に命を持ったらという冗談を冗談で済まさずに描き切ったからです。本当にくまのぬいぐるみに命が宿ったらどうなるのかということを、全く美談なしで描き切ったブラックジョーク満載の映画です。
 
-テッド、誰もが欲しかった人形の友達-
 誰もが一度は願ったことがあるであろう、自分の一番のお気に入りのおもちゃがもし生きて、友達になることが出来たならという願い。しかし、これが本当になったらどうなるのか、この作品は作品自体がそうした冗談によって、成り立っていますが、その冗談を冗談で終わらせない現実に対する非常に鋭利なメスをもって写実的に現在を映し出しています。
 もしもくまのぬいぐるみに命がやどったら。動き回るぬいぐるみを見て、まず両親は拳銃で撃ち殺そうとします。その迫真振りが本当に面白い。次いでどうなるのか、当然メディアの話題になります。一躍子供であるぬいぐるみは、アメリカ中の人気者になりますが、やさしげな声で皮肉を言うナレーションが、一躍有名になったものは、すぐに忘れ去られると述べます。そうして十数年後、中年になったテッドと主人公のジョン・ベネットは二人で仲良く暮らしているだめな大人になっていました。ここから、R指定の謎が解けますが、一見すると、くまのぬいぐるみに命が宿っていじめられっこだったジョンに友達ができ、その二人の友情をあたたかく描いた作品のように予測されるこの作品は、すごい裏切り方をします。いきなり、R指定の言葉を連発し、テレビを見ながら薬をやっている二人。完全に犯罪者です。平気で薬をやっているのですから、びっくりします。テディベアというのは、子供のおもちゃですが、その愛くるしい姿のまま薬を吸っているのですから、その落差が強烈なインパクトを与えます。
 この映画が世界中で悪いにしろ良いにしろ話題になったのは、この裏切りがあったからでしょう。まどか☆マギカも、3話で観客の期待を見事に裏切りました。魔法少女もので観客が絶対に予測しない、主要キャラクターがモンスターに食べられてしまうということが、あらゆる面に観客を裏切りました。この作品でも、テディベアという私たちの愛玩の対象となるぬいぐるみが、突然薬を吸いながらRワードを連発している姿を見せられ、観客は見事に裏切られたわけです。
 
 この作品の一つの側面としては、そうした落差を描き出した点があります。テディベアというぬいぐるみのかたちをとって象徴的にしている部分はありますが、この作品では、没落したスターというテーマが含まれていると私は思います。途中で登場する、かつてテッドとジョンが夢中になったヒーロードラマの主人公は、老人になりながらも、筋肉隆々としていますが、見事に没落しています。薬をきめて騒ぐさまは一見明るく見えますが、内実とても暗黒な場面でもあると私は思います。ちなみのこのヒーローは、「フラッシュ・ゴードン」という80年代の映画だそうです。私は若い人間なので知りようがなかったのですが、B級すぎて逆にコアなファンに愛された作品だそうです。ここで主役を務めたサム・ジョーンズ本人がカメオ出演しています。
 テッドも子供のころからメディアにひっぱられ、神の奇跡だなんだと騒がれた挙句に、とたんに忘れ去られる。メディアの恐ろしさというものをよく描いた作品だと思います。メディアは知らず知らずのうちに、テッドやサム・ジョーンズをヒーローに祭り上げておいて、自分たちの興味がなくなったらとたんにしっぺ返しを食らわせる。一旦人生の甘みを見せられた人物たちは、とたんに酸いの世界に落とされるのです。最初から人生に黄金時代を持たない人間は、ある程度の逆境に持ちこたえますが、黄金時代を経験してしまった人間というのは、なかなかどん底にある自分を認めることができません。認めることができなければどうするのか、薬によって現実をごまかそうとするのです。これが芸能界の人間に不祥事が絶えない理由なのだろうと私は思います。

-奪われるパートナー、擬似三角関係-
 『テッド』がメーンテーマとして描き出そうとしているのは、何よりも友情だろうと思います。私はよく三角関係を説明するのに、「欲望の三角関係」の理論を作り出したルネ・ジラールの論を用いますが、この作品でも性別は異なりますが、三角関係ができていると思います。
 主人公ジョンを少年からの付き合いであるテッドと、ミラ・クニス演じるロニー・コリンズという彼女が奪い合っている構図です。自分の親を持つわけでもなく、突然精神は少年としてこの世に生まれたテッド。彼には身内と呼べる人間が親友であるジョンしかいません。テッドには本質的に親の存在が欠如しているのです。ですから、親からの愛情がありません。そのことが悪いことを行う原因にもなったと考えられます。テッドにとっては、ジョンは人生のすべてなのです。
 テッドにとって、ジョンは自分が存在することを望んでくれた存在でもありますし、27年間ずっと一緒に生活してきた親友でもあります。そのジョンを付き合って4年の彼女に奪われてしまうというのは、ジョンとテッドが恋人関係でなかったとしても、辛いことです。テッドにはその容貌から仕事もありませんし、今まで仕事をしてきた経験もありません。それなのにパートナーであるジョンを奪われてしまったらどうやっていきていったらいいのかわかるはずがありません。テッドはジョンから離れることが本質的にできないのです。
 しかし、ジョンからテッドが離れて行かない限り、ジョンとロニーは恋人としての関係が成立しません。ロニーはまじめな人間で、ジョンのユーモアな部分にひかれていますが、テッドがいると寝室に入ってきたり、ジョンを薬などの悪いものでダメにしてしまいます。
 ジョンとロニーのデートから帰ると、家でテッドが娼婦を呼んで遊んでいたという場面がありますが、これはテッドのジョンが奪われてしまう寂しさを埋めるための行為とも考えられますし、擬似的な恋敵であるロニーに対する反抗や嫌がらせとも考えることが出来ると私は思います。
 
 この三角関係は、ロニーが落脱することによって変化が生まれます。ロニーがジョンにトッドとこれ以上一緒にいるのなら、私は別れるといって喧嘩します。ただ、それだけではロニーの大切さを悟ることのできなかったジョンはテッドとともに悪い生活へと逆戻りをしてしまします。ここで登場するのが、もう一つの三角関係です。ロニーの上司で、金持ちであるレックスは、パワハラとセクハラでロニーを奪おうとします。ロニーを奪う恋敵が登場することによって、ジョンもまたロニーに対する意識を強く持ち始めます。テッドの助けもあり、ロニーとの仲直りが出来たと同時に、こんどはテッドが彼のファンだった親子に連れ去られます。この映画は、ジョンの二人の精神的なパートナーであるロニーとテッドが交互に奪われるという構成になっています。そうして、奪われるということを通じてはじめてそのものの価値気づくという関係が出来ているのです。
 テッドを連れ去った親子とカーチェイスをしたりとアクション要素まで盛り込むという、ハチャメチャなエンディングになりますが、最後はテッドがこのまま死んでしまうのかと思われるなか、ロニーの祈りによってテッドが復活します。ここでは、奪われることによって三人の関係が更新され、落ち着いたことがわかります。テッドは自立していくための決心がつき、ジョンとロニーは恋人としての関係が深まりました。

-終わりに-
 私はこの映画を字幕で見ました。日本語吹き替え版では芸人の有吉弘行が担当しているそうですが、字幕と吹き替えの両方を見た友人は、有吉の吹き替えが下手だったと言っていました。なので、字幕をおすすめします。
 また、この映画の最大の特徴は、R指定をすることによって、ふんだんに駆使される禁句の連発です。『レ・ミゼラブル』の著者ビクトール・ユゴーも述べていますが、隠語や禁句などこそ実は注目しなければいけないのです。この映画では、英語の汚い言葉を使用することによって、一つの笑いを提供しています。禁句は音が大事です。英語圏では嫌がられる音が禁句になっているのですから、やはりそれを吹き替えてしまうと、そのぶん音の魅力が減ってしまうと私は思います。私の基本的なスタイルは、字幕でみることです。やはりセリフの音、声の抑揚などが最も活かされたものが映像化されているので、日本の声優陣を蔑ろにしているわけではありませんが、映画だけはそのまま見たいというのが私の考えです。これから見る人はレンタルでしょうか。吹き替えよりも字幕版をお勧めします。

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