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アニメ映画『ベルセルク 黄金時代編Ⅲ 降臨』試論 感想とレビュー 物語話型と三角関係の構図から作品を解釈する

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-初めに-
公式映画サイト
http://www.berserkfilm.com/index.php
 いわゆる「ダークファンタジー」の代名詞とも言える巨大な作品である『ベルセルク』は、漫画史上においてもエロティシズムとグロティシズムを極限まで描き切った稀有な作品です。現在ではたばこを吸っている絵を表紙絵に用いることにもいろいろと問題が発生する表現の自由がかなり規制された時代になりましたが、漫画『ベルセルク』は1989年という時代性から、突き詰めた表現を用いることが出来た漫画です。
 黄金時代編をすべて映像化するという一連の企画の中で、ついにその黄金時代編の最後となったこの映画は、今までのⅠⅡ作で鍛えられた技術により、さらに深みのある表現になっていました。
 ⅠⅡではまだCGらしさ、質感の問題で難がありましたが、今回のⅢでは、今まで日本人が馴染んできたセルアニメのような質感に似せることに成功しています。CG技術によってセル画ではとても表現できなかったような映像美を見事に演出しました。

-物語話型から見るベルセルク-
 前回のドルドレイ攻略の際にも書いたのですが、この物語は貴種流離譚の物語として読み解くことが出来ます。
http://hennkutubunnkazinn.blog.fc2.com/blog-entry-251.html
貴種流離譚とは、折口信夫の造語で古伝承や物語等の発想の一類型。若い神や男女主人公が何かの事情で所属する社会を離れ、異郷に流離し、多くの艱難を経験した後に、尊い地位に到達する。または悲惨な死に逢うもののやがては神にまつられる場合もあった。このような類型は世界的に偏在するが、日本の古来の文学の趣向・筋立ての基本的な話形として一つの伝統を形成している。以下略  
【参考文献】折口信夫「日本文学の発生序説」(折口信夫全集7 昭和30年)

貴種流離譚とは、多くの神話においてもちいられる物語話型の一つです。「古事記」に現れるように、スサノオノミコトやオオクニヌシのヒーローの悲劇性というものがあります。これらのヒーローはいずれも高貴な生まれで(例外はいくらでもありますが)、何かしら流離(さまざまな地方を放浪し)、そうして苦労をするという物語です。思えば、今大ヒットしている『レ・ミゼラブル』もこの話型の一つです。主人公ジャン・バルジャンは生まれこそ高貴ではありませんが、生まれ持った力持ちという特異性や、様々な土地を流離しつつ苦労を重ね精神的に成長していくという物語です。こうしたヒーローの悲劇性が何故神話や古典に多いかというと、それは物語の最も根源的な意味に関わってきます。物語が何故生まれるかというと、人々がそれを読みたいからです。なぜ読みたいのかというと、そこに感情移入したいからです。ヒーローが様々な場所で苦労し、時には死に、そうしてまたよみがえったりするというのは、通常我々が経験できることではありません。ですから、多くの読者は人生の苦労や苦難をヒーローに仮託することによって、擬似的な体験をいているのです。それが神話の最も根幹となる意味性です。ですから、RPGのゲームもこの神話によく似ているためにヒットすると考えることが出来ます。ドラゴンクエストにしろFFにしろ、主人公が各地を歩き回って苦労して、成長する。私たちが経験できないことをゲームという極めて疑似体感度が高い動作を通じることによって仮託しているのです。
『ベルセルク』はまさしく漫画における貴種流離譚、神話系の物語なのです。通常では考えられない力を持っているという性質はまさしくこの話型の典型的な特質です。そのガッツがグリフィスやキャスカ等と旅をし、様々な戦いを切り抜けて成長するという物語なのです。

さらに、この漫画はそうした神話系の物語を下敷きにしつつ、悲劇性をより強めるために様々な物語の話型を導入しています。いわゆるダークファンタジーという物語の話型は、もとは神話の話型から発展したものだと私は考えていますが、漫画やアニメなどのサブカルチャーが発展し、爆発的に物語が増えるなかで70年代80年代に色彩が濃くなった物語の種類です。これは社会性も考えると、例えば戦後を経験した人間が描いたためや、バブル崩壊によって社会の見通しがつかなくなったという心理状態に影響していると私は考えています。

-三角関係を巡る物語-
 人間関係を見てみます。この黄金時代編を一貫する視座は、三人の人間を巡る関係性の問題なのです。すなわちガッツ、グリフィス、キャスカです。
 三角関係についてルネ・ジラールが提唱した「欲望の三角形」(『欲望の現象学-ロマンティークの虚偽とロマネスクの真実』)は、今まで三角関係を扱った作品を新たな枠組みで捉えなおすという偉業を成し遂げています。今回はその論理を使用しこの作品を読み解いていきます。ジラールは「欲望する主体と欲望される対象の間に、主体にそれを指し示して欲望させる、媒体となる第三者の存在」を発見しました。これがメディエーター(媒介者)と呼ばれるものです。つまり、主体と対象の間に、媒介者があるという指摘です。これで多くの三角関係の物語りは読み解けるようになりました。
 男1と女1がいる場合はその関係性は深まらないことがあります。しかし、そこにメディエーターとよばれる自分のモデルにもなりライバルにもなる人間が登場するとこの関係性が一気に深まるというお話なのです。例えば通常ではここに男2が登場します。そうするとよく知られる一人の女性を巡る男二人の取り合いの物語になるわけです。マクロスプラスはこの話型です。漱石の「こころ」もこの形です。
 ただ、「ベルセルク」が面白いのは、この論理をあてはめたときに最初に出てくる関係図が全くことなるという点です。ⅠⅡで提示された関係図は、グリフィスを巡りキャスカとガッツが取り合うという構図でした。男を巡り女と男が取り合うという極めて異例の形が提示されたのです。そうしてⅡではこの関係がグリフィスとガッツのラインが結ばれて、キャスカが除外されるという形になりました。腐女子の方々がこの物語をBLの物語として読み解いているのはまさしくこのためです。あながちその読み方は間違っていないのです。
 しかし、グリフィスが求めていた関係とガッツが求めていた関係は形のことなるものでした。グリフィスは所有欲の非常に強い人間ですからガッツのすべてを自分のものにしたいと思います。しかし、ガッツは自分と対等な関係を構築したかったのです。この矛盾が雪山での決闘になるわけです。そうしてガッツを手に入れられなかったグリフィスは自分の欲望が満たされなかったために軽薄な行動に出て、姫と関係を結びます。それが原因となって牢獄に入れられてしまうわけです。
 1年間の空白の後、キャスカが率いることとなった鷹の団に戻ってくるガッツ。Ⅲの映画はここから始まります。グリフィスを求めて取り合ったガッツとキャスカはライバルという関係でしたが、グリフィスが不在となることで、その攻撃性が共感性に変質し、二人は結ばれます。それが冒頭のエロティシズムで表現されているわけです。
 グリフィスを救出するものの、拷問によって回復不能なまでに傷づけられてしまったグリフィス。グリフィスはガッツとキャスカが結ばれて自分が除外されていることに気が付きます。そのことによって、もっともわかりやすい構図、キャスカを取り合うガッツとグリフィスという関係性になるのです。おそらくガッツとキャスカが出来ていなければ、欲望は生まれないわけですから、グリフィスはベヘリットの元へ導かれなかったことでしょう。仮に導かれたとしても、生贄を求めなかったはずです。しかし、この関係性によって欲望を刺激されたグリフィスは再びキャスカを手に入れたいと思います。それが最後のガッツの前でキャスカを犯すという行動に表れているのです。さらに私は、キャスカを犯すことによってガッツをも精神的に犯しているという構図になると思います。もともとグリフィスはガッツに対しても精神的な所有を求めていました。ですから、ガッツがキャスカに取られたという構図も同時になりたっているわけです。ガッツの前でキャスカを犯すことによって、ガッツに注目してもらいたい、自分に対して強い思いを抱いてほしいというグリフィスの欲望が現れていると私は思います。

-終わりに-
 日食と共につながる異世界という発想は面白いです。原作を読んでいないので髑髏の騎士の正体がなんなのか気になりますが、あの再生の塔の地下にあった町の王が髑髏の騎士の正体だとすると、髑髏の騎士もまた生贄に国規模の人間をささげたゴッドハンドになるのでしょうか。かつて生贄をささげて人外の力を手に入れたものの、1000年という長い月日を経て、その罪滅ぼしのためにゴッドハンド討伐をしようとしているのかもしれません。あるいはガッツに対して強い入れ込みがありますから、かつて自分の友を
ゴッドハンドにしてしまった男という構図も成り立ちます。
 216という数字は、何を参考にしているのか、また何が意味されているのか私にはわかりませんでした。キリスト教的な意味があったかと検索してみたのですが、特に見当たりませんでした。これから断罪編が映画化されるのかまだ不明ですが、早く映画化されることを望みます。

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