アニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』試論-4- 感想とレビュー どう解釈していくか 分析・ネタバレ・考察

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巨神兵に新たに付加された羽のイメージ

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セカンドインパクト時の羽の画像

-序・破・巨神兵・Qの流れ-
 前回は、序・破・Qの流れのなかの、空白の14年間を埋めるために『巨神兵東京に現わる 劇場版』があるということを述べました。さらに論を深めていきます。
 「巨神兵」は前回も述べたように、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』に登場する架空の人口生命体です。今回の劇場版は、ここに登場したキャラクターを使用しつつも、今までにはなかった意味を付加しています。それが、ここで挙げた画像です。これは、明らかに「巨神兵」が「使徒」化しています。もともと、槍状の物体は持っていましたが、このような光る羽は付いていませんでした。そうして、これは紛れも無く「巨神兵」=「使途」にするための戦略なのです。
 破のラストで、リツコが覚醒したエヴァに対して「純粋に人の願いをかなえる、ただそれだけのために」というセリフがあります。これは、綾波レイ役を務めた林原めぐみが、ナレーションを務めた劇場版巨神兵でも、おなじようなセリフがあったと記憶しています。想像する神も、破壊する神も、人の願いをかなえるというような意味あいだったと思います。すると、やはりここでも、破のラストから巨神兵へのつながりが見られます。
 エヴァンゲリオンという作品が、碇シンジ視点で描かれるのに対して、それを客観からみたらどのように見えるのかというのが、今回の『巨神兵東京に現わる 劇場版』になると私はおもいます。映画最後の覚醒によって、途中でカヲル君に止められてしまったためにQではニアサードインパクトとよばれることになった、サードインパクトがおこります。このとき、何故か爆心地に最も近いネルフの人間が生き残り、他の地球上の大半の人間がQでは巨人化しています。ここは、まだ謎が多い部分ですので、他に譲ります。

 ネルフ関係者でない人間にとっては、何気ない日常が突然崩壊で終わるという、まったくとんでもないことがおこるわけですが、それをあくまで名もない一市民の視点から見たのが、この劇場版なのです。ですから、あの弟としてあらわれる幻影は、ひとつには聖書的な天使のイメージがあります。予言をつたえにきたということです。また、人間が破滅を望んでいるというような旨のセリフがありましたが、それは恐らく種として限界に達した我々人類が感じる、リビドーに対するタナトスのようなものであったのかも知れません。この映画は、エヴァと比較せず、一つの作品として考えた際にも、非常に多義的に解釈できます。例えば、3・11による破壊をもういちど映像化して保存しておくということによって、われわれにあれを忘れるなよという警告をしているということです。
 話が戻りますが、エヴァQでは、サードインパクトによって人間は個としての限界まで強制的に発達させられたとされています。それが、暗い描写だったのでわかりにくかったのですが、町中に残存していた巨人たちです。どれもみんなエヴァシリーズのような格好をしていました。ですから、個としての限界の形態がエヴァであるという指摘もできます。そうして、これは劇場版巨神兵と比較した際には、あの巨神兵が、使徒でもあり、人類でもあったということが出来るのです。
 つまり、破壊を望んだ人間によって登場した使徒、これは紛れも無くエヴァの使徒と同質でありながら、また同時に人類そのものでもあるわけです。自ら種の破滅を願ったということです。そうして、巨人化して地球を滅ぼした挙句、人類は破滅。次の新しい生命が生まれることを待つということになります。


-人類補完計画-
http://homepage3.nifty.com/kiraboshi2/Abraxas/Seele_vs_Nerv.html
 先ずは、このサイトを閲覧することを薦めます。ここでは、ゼーレとネルフのすすめていた人類補完計画について、詳しく考察され、結論としてゼーレとネルフがやっていたことは同じだということを論じています。アニメ版、ならびに旧劇場版では、私もこの式が成り立つと思います。ただ、今回の新劇場版では、多少勝手が違ってきます。
 
ゲンドウ「死海文書の契約改定の時が来ました。これでお別れです」
ゲンドウ「あなた方も魂の形を変えたとはいえ、知恵の実を与えられた生命体だ」
ゲンドウ「悠久の時を生きることは出来ても、われわれと同じく訪れる死からは逃れられない」
ゲンドウ「死を背負った群れの進化を進めるために、あなた方は我々に文明を与えてくれた」
ゲンドウ「人類を代表し、感謝します」
ゲンドウ「死をもって、あなたがたの魂をあるべきところへ帰しましょう」
ゲンドウ「宿願たる人類補完計画と、定款された神殺しは私が行います。ご安心を」
キール「我らの願いは既にかなった。良い。すべてこれで良い。人類の補完。やすらかな魂の浄化を願う」

 ゲンドウが、沈黙を続けているゼーレの人間(生物学上のヒトかどうか別として)をなんらかの、支配下においていることがわかります。ここでは、すでに人間としてのからだは失われているようです。魂のみが保管されているという状況なのだろうと思いますが、そのゼーレの人間をあるべきところに帰すといいます。これはガフの扉とよばれる魂のいれものを指しているのでしょう。そうして、キールは既に願いが叶っていると言っています。
 アニメ、旧劇場版ではほとんど到達目的が客観視した場合差異のない人類補完計画でしたが、ここでは明確に、ゼーレの計画と、ゲンドウの計画が変わってきています。ゼーレはあくまでシンジが破の最後におこしたニア・サードインパクトで満足してます(しているように見せかけています。詳しくは後で述べます)。それはカヲル君のいうところの「この星での大量絶滅は珍しいことじゃない」のことでしょう。ゼーレの補完計画はこの先の新たな生命の誕生までは視野にいれていないということがここから読み取れると思います。
 
 ゼーレの後ろ盾を失ったネルフが、しかも、ミサトやリツコたち中間の人間を大量にうしなったうえでどのようにして存続しているのかはまったくの不明です。年をとったゲンドウと冬月と、綾波レイとされる少女がいるだけで、他に人影はいません。もうほとんど人力を失ってしまったネルフが、それでも計画の続行をできる理由というのは、すでに彼らの補完計画が、人力を必要としなくなったと考えるほかありません。

シンジ「操縦が効かない!どうなっちゃったんだ!?カヲル君!」
シンジ「カヲル君!」
カヲル「まさか第一使徒の僕が13番目の使徒に落とされるとは・・・」
シンジ「何言ってるの?カヲル君!」
カヲル「始まりと終わりは同じというわけか・・・さすがリリンの王。シンジ君の父上だ・・・」
マリ「DSSチョーカーのパターン青!?無いはずの13番目?ゲンドウ君の狙いはこれか・・・!」

DSSチョーカーは、本来シンジが覚醒して再びインパクト、すなわちフォースインパクトを起こすのを阻止するためにヴィレが付けたものです。しかし、それを見越してたのがゲンドウだったと考えるほうが自然でしょう。ヴィレがいずれシンジにチョーカーをつける。そうして、それを罪を引き受けるという極めてキリスト教的な行為を通じて、カヲル君がチョーカーをつけることを知っていた。このチョーカーがどのようにして作られたのかはわかりませんが、チョーカーがtypeblueと発すると同時にカヲル君が13番目の使徒に落とされるので、チョーカー自体が13番目の使徒を作るための装置であったことがわかります。これは恐らくヴィレが仕組んでいたということよりは、何らかのかたちでゲンドウが工作していたと考えるのが自然です。

アスカ「こいつ!疑似シン化形態を超えている!」
マリ「覚醒したみたいね・・・アダムスの生き残りが!」

シンジ「なんだこれ・・・」
シンジ「なんなんだよこれ・・・」
シンジ「僕のせいなのか・・・」
シンジ「僕が槍を抜いたから・・・!」
カヲル「フォースインパクト。その始まりの儀式さ」
シンジ「カヲル君!首輪が!」
シンジ「うわっ!ミサトさん!?」

 破では、月のゼーレの施設で建造されていたエヴァMKⅥ。カヲル君は破の最後に、カシウスの槍という(何の意味があるのかまだ不明ですが)槍を放つことによってガフの扉を閉めます。ちなみに、このガフの扉というのは、エヴァ作品内での想像上のものではなく、宗教的に魂がある場所という意味があるようです。このガフの扉というところに、仮に魂が戻り、そこから出たり入ったりしているのであれば、カヲル君はループの話でもしたように、このガフの扉から出たり入ったりできる特権的な地位にいることがわかります。ガフの扉を閉めることができたのも、こうした特権的な力があったからでしょう。そうして、それは彼自身もわかっています。ですから、再び開いたガフの扉を、自分が閉めようと言い出すのです。

シンジ「僕のせいなのか・・・僕が、僕が・・・」
カヲル「君のせいじゃない」
シンジ「えっ」
カヲル「僕が第13の使途になってしまったからね。僕がトリガーだ」
シンジ「どうしよう・・・ねえ、どうしよう・・・カヲル君、僕はどうしたらいいの・・・?」
カヲル「魂が消えても願いと呪いはこの世界に残る。意志は情報として世界を伝い、変えていく。いつか自分自身の事も書き換えていくんだ」
カヲル「ごめん。これは君の望む幸せではなかった。ガフの扉は僕が閉じる。シンジ君が心配することはない」
シンジ「カヲル君・・・カヲル君が何を言っているのか分からないよ!」
カヲル「シンジ君は安らぎと自分の場所を見つければいい」
カヲル「円(縁?)が君を導くだろう」
カヲル「そんな顔をしないで。また会えるよ、シンジ君」
シンジ「カヲル君!!」

マリ「ガフの扉がまだ閉じない!わんこ君がゼーレの保険か!」
マリ「後始末は済んだ!しっかりしろわんこ君!」
マリ「ぐずるな!せめて姫を助けろ!男だろ!!」
マリ「ついでに・・・ちょっとは世間を知るんだ!」

冬月「ひどい有様だな。ほとんどがゼーレの目論見通りだ」
ゲンドウ「だが、ゼーレの少年を排除し、第13号機も覚醒へと導いた。葛城大佐の動きも計算内だ。今はこれでいい」

リツコ「誰のおかげか分からないけど、フォースは止まった。ミサト・・・今はそれで良しとしましょう」

 この項では、補完計画について述べてきました。そうして、ゼーレの補完計画が人類の滅亡であることがわかりました。先ほど、ゼーレはすでに満足しているようなふりをキールがしていましたが、カヲル君がガフの扉を閉めようとした際にわんこ君ゼーレの保険になっていて閉まらなかったという点を考えると、ゼーレはフォースインパクトまでが目的だったのだろうと察せられます。
 そうして、それをマリは止めることに成功するのですが、この状態はほとんどゼーレの目論見どおりであると冬月は言います。ですから、やはり人類の滅亡がゼーレにとっての計画だったのでしょう。カヲルはゼーレから派遣された存在でありながら、ガフの扉を閉めようとしたということはゼーレを裏切ったということになるでしょう。これは、カヲル君がゼーレよりも、シンジ救済を目的としていたからであると考えられます。そうして、ゼーレとネルフ(ゲンドウ)は、カヲルがゼーレを裏切ってシンジ救済の行動に走ると予測していました。だから、特権的な力を持つはずのカヲル君はガフの扉を閉められないように、ゼーレに仕組まれていたのです。

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