きつねのはなし 森見登美彦 感想とレビュー 恐ろしい話にある根底とは

皆さん京都と聞くとどのようなイメージがありますか。例えば金閣や銀閣を筆頭とする歴史的な建造物、清水の舞台なんかもすごいですよね。いままでで300人近く舞台から飛び降りたとか、半数くらいは生き残ってその後成功するらしいですよ。
三十三間堂の数多いる仏像の中には自分と同じ顔があるとか・・・
京の都にはその歴史もさながら、ミステリーも多いですよね。しかもどちらかというと神が関与してそうな、大和の国は八百万の神によって守られていますからね。
そんななか、今回登美彦氏が書いたのは京都ミステリーの中のひとつきつねのはなしです。
狸に化かされたとか狐に化かされたとか、よく言われますが今回はその狐について。
物語は4つ。
一つ目はきつねのはなし。主人公が骨董店でアルバイトを始めたところから物語りは始まります。あまりに怪しいうっそうとした森に住む依頼人との接触を機に主人公はその天城さんという依頼人とのきってもきれない縁に知らず知らずのうちに取り込まれていきます。天城さんは主人公の私の所有物のひとつを欲しがります。バイト先のナツメさんは彼にはなにもあげてはだめとの忠告があったものの・・・そして私は結局とても大事なものを天城さんに取られてしまいます。さて、その後はそうなるか。美しくも妖艶な文章でつづられた怪談話ですよ。
二つめは果実の中の籠、主人公の私はある先輩とであう。その先輩は知識経験共に豊か、数年前にはシルクロードに行ってきたという。先輩の話を聞き続けているうちに、だんだんと異変に気づき始める私は先輩のことを深く知るようになる。先輩の正体は一体なんなのか。
三つ目は魔、街では少し異変が起こり始めます。通り魔事件が発生するのです。そしてそれとほぼ同時になんだか得体の知れないケモノの目撃談が集まり始めます。主人公とその友人にもそのケモノの間の手が迫って・・・
四つ目は水神、ある旧家の話。老人が死の間際になってひたすら水を求めた。使いの人は毎日老人の部屋に水をボトル二本置くというが、翌日になると空になっている。どうして老人がそこまで水を求め続けたのか、それは老人の死とともに判明する。
山本周五郎賞受賞。薄闇の古都でみた悪い夢。目覚めても夢の続きをみているような。