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夏目漱石 「三四郎」 もう一度読む名作 テクスト論からバイアスの解放 その八

greuze_fidelity.jpg
作中で出てくるグルーズの画。
三四郎あて招待状は三四郎が冬休みで帰省中に下宿に届いている
P336ℓ12「三四郎は帰京の当日この招待状を下宿の机の上に見た」ここから三四郎が故郷の福岡に帰った後に届いたことがわかります。
招待主は恭助(戸主)と金縁眼鏡の男の家の戸主との連名
恐らく上の連名で出されていたはずです。小説には明記されていませんが、当時は個人よりも家が重視されていましたから、結婚も個人同士の結婚というよりも、家と家の結婚としての意味合いのほうが強かったのです。戦後になって個人の結婚という意味が強まりましたが、未だに家が連名になった招待状は残ります。これが21世紀になると、本人同士の名前の招待状に変化してきます。
招待者リストに三四郎を希望したのは美禰子
恭助と三四郎は面識がありません。恭助は別に面識がない三四郎を呼ぼうとは思わないでしょう。そうして金縁眼鏡の男とも一度こそあっているものの、当然名前も知りませんから、呼ばれるはずがありません。そこから三四郎を招待したのは美禰子だということがわかります。
美禰子は三四郎の帰省情報(下宿には不在)を知っている
美禰子は三四郎の帰省先住所を知ることが可能だった(野々宮ルート)
美禰子は当然三四郎の帰省情報を知っていたはずです。そうしてもししらなかったとしても、招待状を三四郎にとどくようにすることは可能でした。野々宮家には三四郎の母親から手紙が来ていますから、野々宮に聞けば三四郎の実家の招待状を送れたのです。よし子は美禰子の家に居候をしていましたから、福岡の住所を知ることはよし子を通して野々宮に聞くというそんなに難しくない選択肢があったのです。しかし、なぜかいないはずの追分の下宿に送ったのです。
“来ないことを前提にした招待状発送”という謎
(三四郎が美禰子から受け取った最後のアイテム)

1 美禰子の結婚の謎
美禰子は十二章で縁談がまとまり、十三章では妻として登場
相手は語り手が名前すら示さない「金縁眼鏡」の男
この男は、小説の最後で突然出てきてそうして美禰子と結婚してしまいます。読者はこの突然の美禰子の結婚とその相手が今まで一度も出てこなかった人物のために狐につままれたような感情になります。
「金縁眼鏡」の男が、美禰子に夢中になって求婚した可能性はあるか?
この可能性はあまりありません。だから不思議なのです。
十二章・与次郎との会話
P321ℓ8~「君、この間美禰子さんの事を知っているかと僕に尋ねたね」「美禰子さんの事を?何処で?」~「じゃ、何じゃないか。美禰子さんが嫁に行くと云う話じゃないか」「極ったのか」「極った様に聞いたが、能く分からない」「野々宮さんの所か」「いや、野々宮さんじゃない」「じゃ・・・・・・」と云い掛けて已めた。「君知っているか」「知らない」と云い切った。「どうも能く分からない不思議な事があるんあが、もう少し立たないと、どうなるんだか見当が付かない」
「不思議な事」の中身
美禰子の縁談の相手とよし子の縁談の相手が同一人物!?
P325ℓ10「与次郎はその時始めて、美禰子に関する不思議を説明した。与次郎の云うところによると、よし子にも結婚の話がある。それから美禰子にもある。それだけならば好いが、よし子の行く所と、美禰子の行く所が、同じ人らしい。だから不思議なのだそうだ。~然しよし子の結婚だけは慥(たしか)である。現に自分がその話しを傍で聞いていた。ことによるとその話を美禰子のと取違えたのかも知れない。けれども美禰子の結婚も、全く嘘ではないらしい。」
三四郎はいつ聞いた?
P256ℓ10「今夜妹を呼んだのは、真面目の用があるんだのに、あんな呑気ばかり云っていて困ると話した。~よし子に縁談の口がある。国へそう云ってやったら、両親も異存はないと返事をして来た。それに就いて本人の意見をよく確かめる必要が起こったのだ」
P259ℓ12~「先刻の話をしなくっちゃ」「能くってや」と妹が拒絶した。「能くはないよ」「能くってよ。知らないわ」~「だって仕方がないじゃ、ありませんか・知りもしない人の所へ、行くか行かないかって、聞いたって。好きでも嫌いでもないんだから、何にも云い様はありゃしないわ。だから知らないわ」
ちなみに「能くってよ。知らないわ」というセリフはYESという意味ではなく、NOという意味です。当時流行のセリフで、小説が流行らせたらしいです。

よし子との会話
P329ℓ3~「野々宮さん(よし子のこと)、あなたの御縁談はどうなりました」「あれぎりです」「美禰子さんにも縁談の口があるそうじゃありませんか」「ええ、もう纏りました」「誰ですか、先は」「私を貰うと云った方なの。ほほほ可笑いでしょう。美禰子さんの御兄(おあにい)さんの御兄(おあにい)さんの御友達よ。私近い内に又兄と一所に家を持ちますの。美禰子さんが行ってしまうと、もう御厄介になってる訳行かないから」「あなたは御嫁には行かないんですか」「行きたい所がありさえすれば行きますわ」

「金縁眼鏡」の男は、野々宮宗八の妹との結婚を求めたが、よし子は拒絶。
この「金縁眼鏡」の男は、よし子がダメだったために、美禰子に結婚の申し込みをします。それが纏まって結婚ということになるのですが、一つ問題があります。よし子と美禰子は同じところで暮らしていました。よし子が美禰子の家に居候になっているのです。ですから当然内緒もへったくれもないわけで、よし子に縁談があったことを当然美禰子も知っていて、その男がよし子がだめだったから美禰子のところへ来たということも十分承知しているはずなのです。
よし子がだめなら美禰子でもいいやというような、女性にとっては屈辱的な結婚申し込みですが、美禰子はそれを知った上で承知します。あるいは無神経な申し込みですが、全くそれを気にしていません。ですから当然強い愛があるわけでもなく、男と結婚を承諾した謎がのこります。何処にも謎の答えが描かれていないから解釈が広がるのです。

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