スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アニメ映画「ファイブスター物語」への試論 感想とレビュー 80年代・歴史的様式美をたたえる

ihcgjk.jpg

-大アニメ映画解釈祭-
私にとって、今年の夏はアニメ映画の夏であった。アニメ映画というのは、アニメの持つ利点と、映画のもつ利点とを兼ね備えた、映像メディアとして極めて高度な媒体である。アニメーションの表現技法を駆使しながら、映画のような物語の流れ、時間の制約を受けつつも金銭的にも通常のアニメより余裕がある。そこに人々は思いのたけを注ぎ込むだろう。その注ぎ込まれたものを再び抽出するのが、我々観客に与えられた自由でもあり、義務でもあるのだ。この一見相反する自由と義務。私たちはアニメ映画を見ることによって、それを自分の中で新しい生命として生み出すことが出来る。今このとき、アニメ映画を観、そこに描かれたものを抽出し、現代において活かすべきである。これからいくつかの作品を、出来るだけ時系列順で論じていく。

-初めに-
「ファイブスター物語」は永野護による日本の漫画作品、永野自身は「おとぎ話」であると公言。1986年4月号から、休載を何度か挟んで連載されている。また、1989年には第1話を基にした劇場用アニメーション映画が公開。今回はこの映画を論じます。
80年代の中期にあたる作品として、この作品も見逃せない一つであります。前回に引き続き、この作品にも他の作品からの影響を色濃く反映し、しかもそれを作者が認めているという点でも、ある傾向がつかめると私は思います。

-作品設定-
舞台設定として、超科学技術と歴史的様式美とが共存する世界観というのが評価の理由。「フォース」と呼ばれる超能力、ジェダイのような存在の「騎士」、ライトセーバーに似た光剣「スパッド」など、作品の設定の多くにも『スター・ウォーズ』の影響が見られます。
アニメ映画は、全13話中の第1話(単行本第1巻)のストーリーを元にアニメ化。1989年3月11日に東宝系で公開されました。ですから、私は今回13分の一の内容しか見ていない状態で論じますから、多分に無茶な部分がありますが、歴史的な流れのなかでのアニメ映画として、論じさせていただきます。一つの「ファイブスター物語論」ということになると、また異なったアプローチが必要になると思っています。
歴史的様式美という点で極めて高い評価を得ている作品です。歴史的様式美とは何かというと、これもスターウォーズからの影響だと考えられていますが、初めに歴史的な年表が公開されるのです。もちろん製作中に多少変更があったり、随時詳細が書き足されたりということはありましたが、最初から完成したものとして、殆どプランが出た状態で作品が始まるのです。
プロット主義という言葉があります。物語を描いていく際に、基本となる作品の軸をあらかじめ決めておいて、それにあわせて書いていくという製作の手法です。この作品は、そのプロットを全面的に押し出した作品といえることが出来るでしょう。あらかじめ決められた歴史的流れが提示され、その詳細が随時語られていく、それが作品となる。
我々読者としては、初めからいつ何が起こるのか知ることが出来ます。一体その詳細はどうなるのだろうかと、あらかじめ歴史を知っているだけに、余計に引き込まれるのです。

スターウォーズも同じで、当時は今でいう旧三部作が公開されていました。スターウォーズの主人公が誰かわからない人もいるかも知れないので、そちらにも言及しておきますと、旧三部作を見た人は、ルーク・スカイウォーカーが主人公だと思ったのです。しかし、あらかじめ歴史的な流れが設定としてあり、主人公は違った。ただ、旧三部作の作品の中の時代の流れでは、自然とルークに視点がいってしまう。それで困ったルーカスたちは、新三部作というものをつくり、あらためて歴史を語るに至ったわけです。主人公はアナキン、ダースベイダーです。
スターウォーズは、スターウォーズ全史という本も出ているほどに、歴史的な側面が極端に強い作品です。これに匹敵するほどの作品はそうありません。映画として描かれたスターウォーズは、その歴史のなかのごくごく一部、誇張でもなく氷山の一角に過ぎないのです。歴史は、映画で描かれた何万年も前の話から始まります。ジェダイの誕生から、シスとの戦い、そうして映画で描かれた部分も少しあり、その後ユージャンボングという未知の生命体が攻めてくるというところまでが描かれているのです。完全に一つの世界史のような形になっている壮大な作品なのです。

それに影響されたのが、今回の作品。スターウォーズまでの精密さはないものの、最初から歴史的な流れが提示されるというのは、極めてセンセーショナルな手法であります。語り手は、全てが終わった後の人物であろうことが予測され、しばしば、これが暗黒の時代の幕開けだったというような、神の視点を持っているのです。

-通常の作品からの逸脱とその理由-
敢えて批判するとすれば、プロット主義のもつ欠点があるということです。プロットを前面に押し出しているということは、安定があるということです。初めから骨組みが決まっているから、変に転ぶということもなく、順々に話が展開されている。あらかじめ転換期となる部分では、いよいよ何かが起こるなと予想して読むことも出来ます。ただ、そのぶん、アンチプロットのような、いきいきとした、作品の中の主人公たちが自由に動き回れるということがないのです。ある程度の自由は許されるとしても、あらかじめ運命を定めれられてしまっている主人公たちですから、生身の人間としての自由さ、いきいきさがなくなっているというのは、紛れもない事実です。ですから、見方によっては、息苦しさ、宿命付けられた運命というようなものを感じられます。それは壮大な物語を設定としたこの作品では、よくもわるくも活きているといえます。

カテゴライズは本来あまり意味のないことだと私は思っていますが、敢えてそれをすると、SFに入るのだろうと誰もが思います。しかし、作者自身は「おとぎばなし」だといいます。作者として、歴史的な物語の流れを強く意識して、この作品に向かったがために、そういうことを考えるに至ったのだと私は思います。
SFとして考えたとき、これまた前回同様、非常に緻密に設計された作品であることが分ります。用語説明だけでも相当な分量が割かれています。単純に説明すると、この作品では、他のロボットアニメに見られるロボットとは、あきらかに大きさが異なります。極めて巨大な、戦艦のような大きさのモビルスーツにのっていると言ってよいでしょう。その大きな乗り物を操るためには、パイロットだけではだめなのです。ここが他の作品と極端にことなる部分。一人で動かせていたマシーンという今までの流れからは異なった流れが生まれます。マクロスⅡの歌で見方をコントロールするような存在に近いともいえますが、この作品では、機械の頭脳となる女性が必要になるのです。ただ、一般的なファティマと呼ばれる女性の存在は、遺伝子操作や精神を安定させる加工がなされており、機械と人間の中間のような存在になっています。
またこのファティマと呼ばれる存在と、パイロットの存在も面白く、半分結婚するような側面があります。主人公は以前にファティマを戦闘でなくしていることが語られ、新しいファティマとして、主人公の友人であり、ファティマを製造することを職業としていた男の、ファティマを得ることになるのです。ただ、この男は、自分の命の最後を知り、出来るだけ人間に近いファティマをつくりたいと望み、精神加工をしていないファティマをつくるのです。ですから、殆ど人間に近い存在となります。その人間に近い、か弱い少女の精神が戦闘に耐えられるのか、ということでまた物語が展開していきます。
ファティマはこうした大変手のかかる、人間のような存在でありますから、当然もっと戦闘兵器としてのコストを安く仕上げるために、機械のファティマを作ることを目指す人々も居ます。映画版では、敵方のファティマが、寄生虫のような、戦闘だけを目的として作られた生物が乗っています。
ここで面白いのが、主人公がそうした寄生虫のようなファティマの動かしている機械に対して、優美さがないと評したことです。
この作品では、騎士という存在が多分に強調され、人間として極限に高められた精神や、武術を備えていることで他人に畏怖されています。戦闘一つとあっても、美しさが必要となる、礼節、美の世界、様式の世界が必要になる物語なのです。ですから、昔の騎士物語と同様で、実務的な殺し合いというようなものではない世界を描こうというのがこの作品の思想にあるのです。

-最後に-
地球上の歴史では、そうした戦闘行為においての様式美というようなものは、近代に入ってからなくなってしまいます。人と人との戦いというよりかは、国家と国家の戦いになり、武器と武器の戦いということになってしまったからです。そこに人間としての性質は必要とされなくなり、いかに強い武器か、いかに効率のよい殺人道具かということのみが追求されるようになってしまいました。
この作品では、全体の序章になる部分しか映像化されておらず、それしか見ていないので確かなことはいえませんが、そうした様式美の戦いの終わりを描いているのではないかと、予想できると私は思います。映画は、これから混沌の世界、世界的な戦争がはじまってしまうということを予告して終わります。ですから、そのよくもわるくも、古き時代の終わりの告げる作品ということになるのだと思います。それが如実に歴史的な構成を強めたことにも表れています。そうした古き良き時代の終わりを、悲しみながらも、なんとか保存しようとした衝動がこの作品になっているのではないでしょうか。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

幽玄

Author:幽玄

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
187位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
その他
14位
アクセスランキングを見る>>
フリーエリア
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。