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映画『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い 』への試論 感想とレビュー 作品の性質への言及

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-初めに-
(原題IO, DON GIOVANNI)は2009年にスペイン・イタリアの共同制作によって公開された映画です。
オペラ映画ですが、オペラを映画化したのではなく、オペラ『ドン・ジョバンニ』の製作過程を描いた作品です。
ドンジョバンニ自体を映画化した作品は既に存在していて、1978年製作のフランス映画があります。もちろん製作に当たってはこの作品を見たことでしょうが、今回は新解釈を加えての製作ということで、壮大なオペラ映画となっています。

-作品性-
華麗な18世紀、1700年代後半を描いた作品です。当時のローマでは、重大な罪の一つにローマからの追放ということがありました。ローマの権力は当時莫大なもので、市民という概念があったほどです。ローマの市民ということが一つの重大なステータスだったのです。そんなローマから追放されたのがロレンツォ、この物語の主人公です。
こうした史実を踏まえた作品を取り扱うのは私にとっては結構難しいことです。私は物語論を重視している人間ですから、それが史実となると、歴史に対してこれはいいとか悪いとか判断しなければならないこととなり、どこかそれはおかしいのではと思うのです。史実かどうかは別として作品を切り離して考えるのですが、それもまた一つの作品を狭めてしまう行為にならないかと考えもします。ちなみに、オペラに詳しい人の解説によると、だいぶ史実とは異なるらしいです。

さて、ロレンツォの女性遍歴というのは大変なもので、それが後のオペラ「ドン・ジョバンニ」に活かされてくるわけなのですが、その重要な視点が組み込まれているにも拘わらず、描写がすくないというのが感じたことです。女性遍歴に話題が移ったとき、あれ、そんなに女性徒付き合っていたっけというのが感想。殆ど女性との関係を描いていないという部分があまりにも不自然です。
ただ、それらを消し去ってしまった結果、アンネッタとの心情の変化に焦点が当てられています。オペラ歌手の女性とも恋愛をするロレンツォですが、彼女の大変嫉妬深い性格にあきれ、偶然数年前に出会った美しい女性アンネッタとの出会いによって、全てを投げ出してアンネッタにアタックしていきます。
この映画の見所はやはり、オペラとは総合芸術ですから、絵画的な美しさも含まれます。特に冒頭のアンネッタの、レースのカーテンを開けた先に眠る、光が差している情景は見事というほかありません。
この映画は、全てが舞台であるかのような演出がなされていて、ロレンツォの世界と、彼がモーツァルトと共に作り上げているドンジョバンニの世界との境界があやふやなのです。そのため、現実世界だと思っていても、しばしば、目を凝らすと舞台の背景であったりして、なんだか不思議な感覚がします。オペラを作っているオペラを見ているといったらよいでしょうか。
いわゆるメタオペラを見ているのです。作中作と言い換えても良いでしょう。

-二つの物語の差異化-
これはオペラドンジョバンニ自体への言及にもなることになりますが、ドンジョバンニは自分の悪行への反省が見られません。彼は最後の最後で、自分が殺した騎士長から自分の非を認めるように言われます。死んでいる人間が石造となって出現するのですから、考え方によってはドンジョバンニが相当な精神的な撹乱を起こしていると考えても良いかも知れません。
ただ、それでも彼は認めないと言い張るのです。この映画ではその製作をしているロレンツォは認めることに決心したのです。そこが唯一のこのオペラ映画を物語的に成立させている部分です。
もともと通常であればドンジョバンニの映画化か、ドンジョバンニの製作を映画化するのかということに分けられると思います。この映画はそれを両方採用するという構成的にかなりの無理をしているのです。しかも、製作者たちもオペラ調で描き、その二つの境界をあやふやなものとする。
さて、そうすると、ドンジョバンニのほうはもうストーリーがありますからそれを映像化すればよいだけですが、製作しているほうはどうしようかということになります。これが最後までドンジョバンニと同じだと、結局なんだったのかということになりますから、ここで何とかドンジョバンニとは別の道を歩むのだというところで、ドンジョンニとロレンツォとの差異が現れたのです。
ロレンツォは自分の非を認めることによって、放蕩生活から、堅実な道を選びとります。つまり、アンネッタとの愛に結ばれて、二人仲良く暮らすということになるのです。これがこの映画の救いですが、物語的に考えれば、もともと放蕩者に我々は共感しないのであり、その放蕩者がやっと誠実になりました、程度では納得しません。
放蕩者が誠実になって、その結果大事業を成し遂げるといった成功譚が皆みたいのではないでしょうか。その点で言えば、この物語は大衆向けしません。さらに言えば、作品の性質上、オペラに何らかの興味がない人にとっては縁のない作品といってもいいでしょう。
何故今ドンジョバンニなのか、それがいまいちはっきりしないという点では残念なことです。それから大衆に受けないという作品の性質上の問題もあり、これはなかなか解決には至らない難題であります。

-最後に-
オペラ映画の命はなんといってもやはり、歌と音楽。舞台は安く仕上げた感じがありましたが、その分音楽は相当な力が入っているようで、有名なオペラのナンバーの壮大な音楽が、余すところなく楽しめます。
全体を舞台と考えれば、光の使い方も非常に洗練されていて見るに耐える芸術作品となっています。まあ物語性は、ドンジョバンニに持ってかれてしまっているという印象がありますが、単に芸術作品を楽しむということに関して言えば、楽しめる作品であることは確かです。

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