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名画鑑賞チャップリン特集 『ライムライト』への試論 感想とレビュー 人間のどん底からのリベンジ


-はじめに-
『ライムライト』(Limelight)は1952年公開のアメリカ映画。この作品はチャップリン晩年の作品であると同時に、内容がまた極めて印象的で、チャップリンの人生を彷彿させるような感動の作品です。
ライムライトという言葉の意味は何かと調べてみると、「タイトルのライムライトとは電球が普及する以前に舞台照明に用いられた照明器具で、名声の代名詞でもある。」とウィキペディアに出ていました。
この名声ですが、チャップリンはこの2時間強の映画に人の人生を何とか閉じ込めたのです。
この映画は、かつてイギリス一と言われた道化師のカルヴェロの落ちぶれた日々を描き出します。既に映画が始まったときにはこのカルヴェロは落ち目に合っているのです。そこからどうやってかつての栄光を取り戻すのかという映画になります。たぶん今更モノクロ映画ということで話題になった『アーティスト』はこの影響を受けているのではいでしょうか。話の筋が大分似ていますからね。
とすると、このかつての栄光から落ちぶれた人間、その人間がもう一度立ち上がろうとするときに何か皆共感を得るのでしょう。人間が立ち上がる。しかも人生のどん底から。これはいってみればイエスキリストと同じ構成です。イエスキリストは馬小屋の飼葉桶で生まれました。教義的に解釈すれば、人間の底辺に生まれたことになります。そこからの立ち上がり、これに皆感動するのでしょう。イエスキリストとまで行かなくとも、一人の道化師が再び立ち上がる姿に皆勇気をもらうのです。

-どん底から立ち上がる話形-
この映画は『アーティスト』が同じ構成だと私は考えますが、女性が男性の落ちぶれた芸術家を救うのです。
ここには、もがいてもがいて何とか栄光を掴み取るといった暑苦しさや、英雄伝説、成功譚のようなものは描かれません。言わば、自力本願の世界から他力本願の世界へと移行しているのです。
頑張って一生懸命になっている人、確かにこういう人物から勇気を貰ったりすることはあります。しかし、ずっとそういうものばかりみていると、いくらがんばっても上手くいかない人間にとってはプレッシャーとなってきます。そうして皆が上手く行くはずのない世の中ですから、やはり暑苦しい、重苦しいものと感じることも多いわけです。
そこで、かつては名声もあったが、現在は落ちぶれてしまったという人物が登場する。栄光がそのまま続いていたら観客は見向きもしません。また同様に落ちぶれ続けてきた人間にも興味を持ちません。一度栄光を味わったことがあるから、その分挫折も大きくなるというものです。そこに私たちは共感というより同情を寄せるのです。

そうして、鶴の恩返しや、蜘蛛の糸のように、美しいバレリーナテリーが現れます。このバレリーナ、実は自分のバレエ代を払うのに、姉が娼婦として金を稼いでいたことを知り、ショックを受け躍れなくなってしまうのです。
精神的に、自分が踊ることがイコール姉が性を売ることに繋がってしまったのです。そうして自殺をしようとしたところをカルヴェロに救われる。さすがにカルヴェロのように歳をとると、若く少壮気鋭、新進気鋭の若者の自殺を救おうと考えるのです。これが一種の老いの美徳かも知れません。この物語は、バレリーナテリーがカルヴェロを救うという印象が強いですが、一方序盤ではカルヴェロがテリーを救っているのです。
そうすると、ここには人は人と助け合って生きているという道徳的な観念が生じますが、それがさりげなく描かれている。しかも、こうしなさいという脅迫的なものはない。ここにはその一例が提示されているだけで、しかも美しいのです。それがすばらしい。

-恋と方向性-
救い救われの関係が最後には結ばれる二人ですが、テリーは自分が救われたことに対して感謝を抱いています。しかも、老練の芸術家。深みのあるやさしさと、安心感。彼女は彼に恋をするのです。しかし、カルヴェロは歳が離れているとか、経済的にどうだとか、つりあわないとかなんとかいってとにかく逃げまくる。逃げるから余計に女性としては追掛けたくなるような構図になると思うのですが、この恋はつねに一方通行なのです。
実際にはカルヴェロも彼女のことが好きですので、双方向とも考えることが出来ますが、彼の今までの知識と経験、それから彼女のためを思えば思うほど、彼女を手放さなければいけないと感じるわけです。
そうして、もう一人重要な人物が作曲家のネヴィル。彼もまたテリーに恋をした一人でした。しかしテリーはカルヴェロを忘れられない。ネヴィル→テリー→カルヴェロという関係なのです。
追い続ける美しさがここにはあります。恋とは~をこふということですから、一方向でなければいけません。そこに憐憫の情を感じたり、はかなさを感じたりするのです。現在であれば、年の差カップル、年の差婚なんていうものが平気になってしまいましたから、そういう点では現代では通用しない映画になるかも知れません。しかし、まだ多くの人がそういうのは特殊な例と思っているでしょうから、例えば年の差があるパートナーがいる人が見ると、この映画はそうした人達への一つの指針となるかも知れません。

ライムライトの魅力は、チャップリンの落ち着きある演技です。今までの喜劇王と呼ばれた姿はあまりありません。気力が少なくなってしまったものの、人間としての深みが増した老人がいるのです。チャップリンが化粧を殆どしないでそのまま出て来たのですから、当時見た人はどう思ったのでしょうか。私はこれをみて衝撃を受けました。いつのまにか、チャップリンが老人になってしまっている。
しかし、その老いは決して醜いものではないのです。詩的な美しさがあります。ライムライトを有名にしたひとつの要因にあのメロディーがあると思います。川の流れのまだ速い、水がくくっていくような滑らかさ。そうして少し広くなり緩やかに流れるようなあのメロディー。一度聞いたら忘れられないような印象的なメロディーがこの映画を詩的にしているのです。

-最後に-
この映画は、カルヴェロという道化師が再び栄光に帰り咲いたところで、死を迎えてしまいます。これはバッドエンドなのかハッピーエンドなのか、誰にもわからないものです。悲しくもあり、それでいて感動的な終わり方なのです。舞台の袖で踊るテリーを見ながら死ねたカルヴェロは最後に彼女の美しい踊りを見て何を感じたのか。
あのメロディーとともにゆっくりと死んでいく様は実に美しいのです。彼の人生は、そのままチャップリンの人生といってもいいような壮大さがあります。
後身に道を譲る。単にそれだけではなく、カルヴェロは最後の最後まで道化師なのでした。自分の死さえも笑いに変えようとする姿に、観客は涙するのです。
チャップリンという男の一生をカルヴェロという道化師に置き換えて、2時間の中に保存する。それが成功したから我々はここに共感し、涙するのです。名画をどうか夏の間に御覧になっては。

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