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夏目漱石 「心・こヽろ・こころ」 もう一度読む名作 テクスト論からバイアスの解放 その十四

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4、Kの自殺について
「こころ」は文学部の学生の卒業論文のトップ3に入るくらいに人気度を誇ります。高校で勉強して、大学でもう一度勉強する、これがその原因でしょう。ただ、念頭においておかなければならないのは、その中でもKの自殺についての論文を書く人が居ますが、これは不可能だということです。
確かにKの自殺は、遺書が手がかりになりますが、それは引用でしかなく、Kの自殺原因、Kの内面劇を特定することは不可能なのです。しかし、文学者は、どんな可能性が考えられるか、さまざまな可能性を探るということは出来ます。

・Kは「先生」の御嬢さんに対する恋心に気づいていなかったのか?
どんな鈍い人でも、恋をすれば親友がその人に恋をしているかどうか気になるはずです。
元々勉学を大一とする人間で、恋愛には興味がなかったことでしょう。しかし、いざ自分の問題となってみると、それでも「先生」と御嬢さんとの関係を考えないというのは些か無理があると考えられます。
P247ℓ9「不思議にも彼は私の御嬢さんを愛している素振に全く気が付いていないように見えました。無論私もそれがKの眼に付くようにわざとらしくは振舞いませんでしたけれども。Kは元来そういう点にかけると鈍い人なのです。」
先生の遺書というものは、先生の独断の意見がずばずば展開されるという特徴がありました。しかし、ここでは「先生」妙に遠慮深い書き方をしています。Kは鈍いでしょう。ですが、いくら鈍くても、自分の問題です。「先生」のずばずば自分の解釈を押し付ける普段の形から逸脱していることも鑑みると、もしかしたら「先生」はKが自分の御嬢さんへの感情を気づいているのでは、と思っている可能性があります。しかし、そう書くことは、Kが自殺してしまったのでできないのです。

・突然告白された時
P268ℓ16「恐らくその苦しさは、大きな広告のように、私の顔の上に判然りした字で貼り付けられてあったろうと私は思うのです。いくらKでも其所に気の付かない筈はないのですが、彼は又彼で、自分の事に一切を集中しているから、私の表情などに注意する暇がなかったのでしょう。」
ここで「先生」はまた大変歯切れの悪い説明をしています。が、の後の文章は実際こんなことはないだろうと、先生自身も感じながら書いています。説得力のない説明です。それを先生自身分かっているのです。
P272ℓ4「どうしてあんな事を突然私に打ち明けたのか、又どうして打ち明けなければならない程に、彼の恋が募って来たのか、そうして平生の彼は何処に吹き飛ばされてしまったのっか、凡て私には解しにくい問題でした。」
先生はモノローグ型の人間ですから、自問自答法を使用します。しかし、いつもは自分で出した疑問に対してそれの説明を始める先生が、ここでは疑問について追求していません。普段することをしない、追求しないということ自体が、突然打ち明けたことを、Kの策略ではないかと秘かに思っていると考えることが出来るのです。

・「先生」が自分の恋心を抑圧して親友の恋の応援者となるか、親友を裏切って自分の恋に進むエゴイストとなるかという二者択一状況に追い込まれたのは、果たして偶然か、Kの策略か
この二者択一問題は、先生がもし、Kの告白時に告白返し、つまり俺も実は好きなんだという文言をいえていれば成立しないはずです。告白返しをすれば二人はフェアな状態で恋のライバルとして戦えたはずなのです。
ですから、この告白返しをさせずに、この状況に追い込んだのはKの策略ではないか、という疑問が生まれます。「先生」の御嬢さんに対する恋心を知っていて、「先生」を止めようとしたのではないかと考えるのです。
P282ℓ4『精神的に向上心のないものは馬鹿だ』は「先生」がKを止めようとしたのではないかと読むことが出来ます。ここには秘かにではありますが。Kも「先生」を止めるための策略をしたという示唆も含まれています。
「先生」は「先を越された」。Kは「先を越した」という感情があり、Kは「先生」に恋をとるか、友情をとるかどちらだといい迫っているという状態なのです。もちろん御嬢さんは、「御嬢さんの笑い」から、「先生」の恋心を知っています。

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4、Kの自殺について「こころ」は文学部の学生の卒業論文のトップ3に入るくらいに人気度を誇ります。高校で勉強して、大学でもう一度勉強する、これがその原因でしょう。ただ、念...

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