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映画『home』を観て 感想とレビュー ひきこもり、我々は知ったかぶっていた

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ドキュメンタリー映画です。2001年の作品で、映画業界ではかなり話題を読んだ作品です。またその内容から、現代心理学を読むとく上においても重要な作品です。知らない人も多いでしょうから、先ずは作品の紹介と概要。次にこれを観て私が感じたことを記します。
労働新聞 2003年1月1日号 15面・文化http://www.jlp.net/letter/030101a.html
「home」監督 小林 貴裕さん(26歳)にインタビュー

CINEMA TOPICS ONLINEhttp://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3417

概要
現在は実家の長野県から離れて暮らしている小林貴裕さんには、
7年間引きこもったままの兄・博和さんとそんな息子を抱えて、
精神的に苦しむ母がいた。
貴裕さんは、兄を救出するためと同時に専門学校の卒業制作作品に、
自分の家族をテーマにした記録映画「home」を撮影しようとした。
そして、カメラが家に、そして兄の姿を捉えていく。
初めこそ貴裕さんとカメラを避けていた兄だったが、
貴裕さんの粘り強い関わりによって、段々心を開いていく。
番組では、記録映画「home」から引きこもりの現場や
そこで何が起こっているのかを伝えるとともに、
引きこもりの当事者・精神科医へのインタビューを通して、
「なぜ、引きこもるのか」
「引きこもりは本当に甘えや怠けなのか」ということを考える。
(製作:朝日放送)

私の意見
先ずこれを観て、ひどく動揺した。あまりに刺激が強かったため、私は途中で具合が悪くなり、しばらく眼を背けざるを得なかった。震災時の映像を観ているような心持であった。
それと同時に大変論じにくい作品だと思った。ドキュメンタリーというものを殆ど観てこなかった私にとっては、この映画は初めて論じるドキュメンタリー映画である。
これは暴力である。私はその暴力の生生しさに具合を悪くした。家族が崩壊してばらばらになるよりひどい状態のものをまざまざと見せられて辟易した。母も兄もカメラを向けられることを非常に嫌がっていたのにも拘わらず、それを撮り続けた小林貴裕さんの信念とはいったい何だったのか。これを考えてみたい。

一本の電話から始まったこの作品は、祖母ががんであると告げられていよいよ窮地に陥った母からのものであった。実際祖母は作中ではいつも元気で全く問題のない人間の一人である。私はしかし、この祖母がどうして母を助けようとしないのか、これが気に掛かった。恐らく同じ敷地内に住んでいるであろう祖母は、普段から母や兄の様子を見て、知っていたはずである。しかし、祖母は何故か一人母と兄とが住んでいる世界とは違った位置にいるように感じられるのである。これは母が極寒のなか車で寝ていて、小林さんに祖母の家にいこうといわれたときもいやだと言ったことからも伺える。祖母は全く無関心なのではないだろうか。だから母は祖母に頼ることができなかった。兄や自分の夫の問題も全て抱え込まなければならなかった。それがうつにも影響しているのではないか。
引きこもりというものを頭では理解していたものの、それは単に机上の知識にしか過ぎなかったことを強く感じさせられた。ただ自分の部屋から一歩も出ないということではなかった。母への暴力、弟への暴力、夜中の掃除、など全く知りえなかったことである。
家からでられないということが、この家族の問題をより重くしていると感じた。家からでられるのならば、離散という形をもって母は恐らくうつにはならないで済んだであろう。
一体この二人が嫌がるのを無視してまでもカメラを回すことを強行した理由とはなんであろうか。彼は初めのほうで自分の認識の甘かったことをカメラに向かって話していた。それから母へ向かってどうしてもカメラを回さなければ向き合えない。自分ひとりでは立ち向かえないというようなことを打ち明けていた。確かにこの悲惨な状態を眼にすればだれであっても一人ではとても対応しきれないと感じるだろう。しかし、だからといってカメラがあればなんとか向き合えるというのは一体どういう心理であろうか。ここがどうも私には理解できない部分である。家族が大変な状態になっていた。自分ひとりでは向き合えない。でもカメラがあれば向き合える。これは普通の人間の心理とは違うと思う。
カメラで撮っているから大丈夫、向き合えるということは、カメラを持つことによって何かしらの安心感のようなものが小林さんに与えられたのかも知れない。或いは客観的なものに残すという行為によって自分の立ち居地を客観的な場所に置くことができたのかも知れない。そこまではいい。だが、母の泣いている姿まで映すということはどういうことなのだろうか。
あまりに立ち入ってしまうと自分ではどうしようもなくなるから少し離れた位置から家族を撮ろうとするのはいい。だが、目の前で泣いている母に対してまでも、慰めの言葉をかけながらも片手までカメラを回しているのである。これはいよいよ理解がし難い行為になったきた。赤の他人をドキュメンタリーとして撮っているのならまだわかるのだが、自分の母親である。どうもここに、カメラで撮っている側の小林貴裕さん自身にもこの家族問題に対して原因があるのではと思われる。
小林さん自身も打ち明けている通り、家族から目を背け、逃げてきたことは事実である。だが、それはこの撮影を始める前の話である。私はこの撮影が行われている瞬間にも、こころのどこかでこの家族から離れた部分があるように感じられるのである。
この映画は最後に兄が家を飛び出すということを持って終わりを迎えた。結局兄は引きこもりから半ば強制的に家を出るということによってこれを克服したのである。だからひきこもりが治った、よかったということになる。だが、それで母は救われたのであろうか。もちろん母に大いに影響を与えていたであろう兄がいなくなったことによってかなり改善されるであろう。しかし祖母との問題もあり、また夫との問題もある。私はこの映画は兄と母とともに重要な人物であると考える。
この作品は兄の家出をもってして終わることからも兄に重点が置かれていると感じる。だが、母の問題が未だ解決していないのである。私はこの後母がどうなったのかが知りたい。母はあれだけ具合が悪いといっていたのにも拘わらず、遠い山の上まで行ったり、極寒の中車で寝ていたりといのちにかかわりそうなかなり危険なことをしている。それだけ追い詰められていたということもあるだろうし、母は何か抱え込んでいるのだと思う。やはりこの母の抱え込んだものが少しずつおろされていかない限りいけないのである。

作品として、その描かれている内容の良し悪しは別として、非常に人に訴えかける力のある作品である。私はこれを撮影している暇があるのならばはやくしなければならないことがあるのではないかと疑念を挟む。だが、実際このような誰も見たことがないものを撮影した時点でこの問題は恐らく終わっているのであろう。
撮影当初は全くその後がどうなるかなど思いつかないはずである。なぜならドキュメンタリーだからだ。それが今回はたまたまひきこもりの兄を救うという奇跡的なことが起こったから上映できたのである。その全く先が見えない中でなんとか撮影しようとした意志に感服する。またひきこもりの多くの原因のなかの一つであろう受験も考えなければならないことである。
これはまさに現代日本のそのままを写したものである。であるからそこに写っているものは深く考えなければならないのである。兄は当時でも珍しい高校浪人であった。大学浪人でさえ現在では少なくなってきているし、ここから生まれ出る問題はいくつもある。まして高校浪人である。これが兄に何かしらの影響を与えたと考えないほうが無理がある。高校浪人を出さないようなシステムを作るべきであると感じる。それはだれもが入れる学校を設けるということも一つの手であるが、そうではなくて、普通の学校に何かしらの措置を設けさせるべきである。
これは確かに特殊な例かも知れない。しかしその特殊な例を見て私たちは考えなければならないことが多くあることに気が付かされるのである。私たちが普段知っていると思い込んでいるもの、或いは見たくない現実、これをきちんと見ることによって先ずその事実を認める。それから考える。もしできれば解決策を講じるという領域までいければよい。さらに解決できればなおよい。そうした点でドキュメンタリー映画の必要性、それから人に与える影響力の強さ、これを感じた。

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ドキュメンタリー映画です。2001年の作品で、映画業界ではかなり話題を読んだ作品です。またその内容から、現代心理学を読むとく上においても重要な作品です。知らない人も多い...

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