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「道徳の時間」 道徳について考察する~5~ 「沈勇」と「ポトマック川の英雄」 比較研究

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ポトマック川の風景。ワシントンDCクチコミガイドからhttp://4travel.jp/overseas/area/north_america/america-district_of_columbia/washington/travelogue/10560852/
数度にわたって「道徳の時間」 道徳について考察するというタイトルをつけながら、全くそれらしくありませんでした。むしろ、文学研究といったほうがよかったようです。失敗しました。
ですが、最後はきちんと道徳について考えます。
ひとつ皆さんに読んでいただきたいものがあります。それは「ポトマック川の英雄」(中尾明)です。
これは現在小学校六年生の「道徳の時間」の「読み物資料」に載っている教材です。この「ポトマック川の英雄」と以前から紹介してきた「沈勇」を読み比べると、現在の道徳と過去の修身の違いが見えてくるのです。

両者を読み比べ、その内容にどのような違いがあるか、道徳教育(修身科と戦後の道徳の違い)の観点から、具体的に述べます。

「沈勇」は潜水艦の事故によって亡くなった人々の話である。アメリカやイギリスでも同じような事故が起こった。だが、これらの人々がハッチのもとへわれ先へと折り重なって死んでいたのに対し、「沈勇」ではそれぞれ持ち場についたまま死んでいた。

「沈勇」は今現在でも通用するすばらしい話である。だが、これは正しいことを正しいと教える修身科の教材になっている。
「沈勇」では佐久間艦長の行動が正しいことである。事故が発生したにも拘わらず、落ち着いて対応したこと。出来る限りのことに力を尽くしたこと。部下の遺族や、潜水艦の今後の発展への配慮、等々である。
ここではこれらの佐久間艦長の行為は完全に正しいこととして教えられるが、その内容如何は別として、これのみしか教えられない。言い換えれば別の正しいことはないのである。この佐久間艦長の行為を理想の型として単純化し、最後には「人事ヲ尽シテ天命ヲ待ツ」という格言が添えられている。この格言の意味は人間の能力でできる限りのことをしたら、あとは焦らずに、その結果は天の意思に任せるということ。
「沈勇」は佐久間艦長の行為を正しいものとして教え、正しいことをしなさい、自分に出来る全てのことをしなさい、その上であとは天命にまかせなさいということを教えているのである。

「ポトマック川の英雄」は「沈勇」に対して多元的な価値観があることを教えている。ここで対比的なのが、二人の英雄である。一人は口ひげの男(アーランド=ウィリアムズ)、もう一人はスカトニックである。
スカトニックは川に飛び込む前に道徳的価値と自然性とで混乱する。川で溺れている人を助けなければいけないという価値と、自分が死にはしないか、もし死んだら妻子が大変だという自然性である。結局道徳的価値が強まりスカトニックは女性を助ける。
一方事故の被害者でありながら他人の救出に尽力した口ひげの男は最後死んでしまう。
ここで、他人を助けて死ぬことと、自分の命のために他人を助けないことと二つの価値が出てくる。
レーガン大統領はこのどちらも正しいことであるという。スカトニックと口ひげの男がともにパートナーシップであると讃えたのち、しかしこの二人は他のアメリカ人と少しも変わらないという。他の人より少しだけ勇気があっただけなのである。
これが修身科の教科書であるならば、自分を犠牲にしても他人を救うべきだということが教えられる。だが、状況と場合によってはその正しい行為、行動が変わってくるということをここでは学ぶことができる。

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ポトマック川の風景。ワシントンDCクチコミガイドからhttp://4travel.jp/overseas/area/north_america/america-district_of_columbia/washington/travelogue/10560852/数度にわたって「道徳の時間」 道徳について考

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