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映画『虹色ほたる~永遠の夏休み~』 感想とレビュー アニメーションでしか出来ない作品






原作 川口雅幸(アルファポリス刊)
監督 宇田 鋼之介
脚本 国井 桂
キャラクターデザイン・作画監督 森 久司
画面設計 山下 高明
美術監督 田村 せいき
音楽 松任谷 正隆
主題歌 「愛と遠い日の未来へ」松任谷 由実
出演 
 ユウタ 武井 証
 さえ子 木村 彩由実
 ケンゾー 新田 海統
 ユウタ(大人) 櫻井 孝宏
 さえ子(大人) 能登 麻美子
 ケンゾー(大人) 中井 和哉
 青天狗 大塚 周夫
 蛍じい 石田 太郎
東映アニメーションがいよいよオリジナルアニメーション製作に再び力を入れ始めました。とても強いメッセージのこもった作品ですが、別段メッセージのためにつくられたという媚びた様子も無く、今現在私の中では今年最高の映画だと確信しています。こんなよいアニメーション映画は久しぶりにみました。観客があまり入っていませんでしたが、これは宣伝ミスでしょう。こんなに感動できるすばらしい映画は今に観て御覧なさい、口コミでロングセラーになりますよ。この記事を見た方には是非劇場に足を運んでいただきたい。私がここまで薦めることは稀有ですよ。
副題としてアニメーションでしか出来ない作品だと述べました。これは実写にしたらなんとつまらないものになるかわかったものじゃありません。CMなんかを見た方はわかると思いますが、線がきっちり描かれていません。手抜きではなくして、故意にやっているのです。崖の上のポニョのように手書き感を敢えて強調することによって生まれ出る味があるのです。
この作品は震災のこともあり、テーマ・キャッチコピーは「今を生きる」です。生きるということはその反対の事物である死を認識せずには生まれ出ません。つまり生と死は二項対立であると同時に、表裏一体なのです。生とともに死を強くイメージさせる重い作品ですから、それをきっちり描いてしまったら暗いだけです。その中和剤としてもこのラフな絵が活きてくるのです。
ほたるという虫、今ではちっとも見られなくなってしまいました。実はこのことも大いに作中で物語られるのですが、ほたる自体も寿命は非常に短いのだそうですね。そしてそんなはかない命だからこそ今を生きる。運命の相手を探すために必死になって光る。
この作品は多くのことに言及がなされていて、この上なく深く多義的な作品です。おそらく見る人によっても受け止め方が全く異なる可能性もあります。

印象に残る場面がこんなに多かったと感じる作品も今までにありません。先ずは不思議なおじいさん、蛍じいと主人公ユウタとの出会いの場面。光がはっと差し込み、何か神秘的な、それでいてどこか冷たげな光景は心に響きます。聖書を題材としたディズニー映画の出エジプトの物語で、羊を追って迷い込んだモーゼと神の木の出会いの場面が思い出されました。神なる光の具現化です。
次はタイムスリップの直後、ユウタとさえ子が出会う場面。これはこの間みた新海誠監督の「星を追う子ども」の明日菜とシュンがであった崖にもにて、そこからなにか言い知れぬ恐怖を感じました。本当は怖くない場面なのになぜかさえ子が冷たく感じられたのです。一瞬死後の世界なのかとも考えましたが、実はタイムスリップだったのですね。でもこのとき感じたものはあながち間違ってはいなかったろうと思います。夕日がとてもきれいでした。
次は青天狗が若かった頃に見た虹色蛍の光景。岩の中に入っていくと水が滾々と沸き出でている。その閉鎖された空間のなかで虹色の蛍がかっと光を放つ。虹色に染まる岩の断面。これは今でも頭の中に残っているほど鮮烈な印象を与えました。虹色蛍関連でいけば最後の大群となった虹色ほたるの光景も印象的でしたが、私はこちらのほうがより深みがあり静かななかに情熱があるといった感覚を持ちました。
最後はやはり製作者側も印象に残るといっている、ユウタとさえ子が二人して灯篭祭りから抜け出していく場面でしょう。今までのラフでどこか暖かみをもった描き方とは打って変わって劇画チックに強い線で描かれたシーン。スピード線の乱立で、人物も急に現実味を帯びて恐怖感を持ち、激動という言葉を具現化したような場面。これはこの映画で最も重要なターニングポイントとなる部分だからなのでしょう。映画「鉄コン筋クリート」を見ているような動き、激しさを持つと共に、暗い重い画像のなかでどこか現世に戻ろうとする強い意志を感じられるのです。ここでは今まであった光がまったく描かれない。

この作品を論じるうえでやはり重要なものは「ひかり」です。なんとこの映画CGを一切、100パーセント使用していない。全て手書きなのです。蛍の大群が動き回るところなどCGかなと思ったのですが、きちんと丁寧に丹精込めて作られたとパンフレットに書いてありました。そしてパンフレッットでも最も言及されている部分に「ひかり」の表現があります。
確かに作品を観ている間ずいぶん光の描き方が今までのアニメとは違うなと感じていました。太陽が上にきたときに普通のアニメならば写しているカメラが無意識のうちに現れ、レンズを通してみたときのように幾何学てきな光の輪がいくつもでますね。でもこれはそれが人の目のようなもので観ている感覚に近いのです。光がふわふわとかたまる。これは新しいなと思いました。
またほたるのひかりといい、灯篭といい、花火のいい、暗いなかでのひかりの表現が今までのアニメーションと比べても断然上手い。リアリズムではないのです。絵画で言ったら写実派より印象派。だけれども何故かこちらのほうが共感できる。
先ほど述べた印象的な場面と並び、ひかりの表現といい、やはりこれは実写やCGでやったらばつまらないものになりましょう。それをよくわかっている。製作者側はそれを理解した上で、アニメでも写実的にきっちり描かずに、このように描いたのでしょう。

またこの作品はつっこめる部分が多いことも素敵な理由の一つです。完璧でつっこみどころがない作品は観ていてすごいと思うけれど後に残らない。この作品の人物はラフな輪郭線、出来る限り省略した描き方の性で、なにかふらふらしていて、くにゃくにゃしていてどこかスライムめいているのです。そこまで人間ぐにゃぐにゃにならないよと思いながらも、これが確かに思いテーマとよいバランスをとっているなと感じました。
ただ、キャラクターとは対照的に背景は実にリアリズムに満ちているのです。この対比がまたなんともいえない魅力の一つです。ですが、ただ写実的にしているのではない、そこにもやはり省略はあるのです。ですからこの作品は全てを出し切らないところによさがあります。実に簡略化されたなかで、観客がその部分を補っていくという相互作用が働き、作品の深みが出ているのです。
作品の深みについては絵もさながら、物語構成も非常に重きを成しています。タイムスリップという不可思議なことが起こる作品ですが、回想も含め4つから5つほどの時間軸が展開されます。それぞれ明確に分かれていますが、このように時間軸でもいくつもの層があるということが深みをまします。特に事故の回想場面は重要なところを描かない。この上手く隠す技が絶妙なのです。

最後にキャラクターたちの個性がすばらしい。ユウタの演技はなんだかちょっとわざとらしくと笑ってしまう部分もあるのですが、まあそれはよしとしましょう。子どもたちと老人たちの交流が今はなき人間関係のありようを見せてくれます。1977年にタイムスリップするのですが、とあるダム工事が進む集落では最後の夏休みが送られます。子どもたちは全身全霊をかけてその夏休みを謳歌して、記憶にとどめようとし、老人たちは過ぎ去るものの悲しさに胸を痛めながらも生き抜くのです。子どもは子どもで元気がよく、こんなふうに私もあそべていたらもっと性格のよい子になったろうにと思ったのですが、注目すべきは老人たちの方です。この作品では何故か親世代の大人たちが最初と最後しか出てきません。物語の中心では子どもと老人の対比になっています。
老人たちは子どもとどう生活するのか。今の世はとかく祖父や祖母など身内の老人としか関わりがないと思います。しらない老人とは関わりを持ちませんよね。神主の青天狗はまるで雷さん。厳しく子どもを叱りながらもどこかで愛しているのです。子どもたちのためにと思って行う灯篭作りはどこか老人の悲しさがつまっています。
蛍じいは仙人のようです。神的な力を持っていながらそれを利用してユウタに全面的に協力しようとはしない。あくまで自然の摂理に従うのですが、暖かさを持ち合わせていてこの作品一番の謎の人物です。最後は仕方ないといった心持で、ユウタにやさしくその力を使うので、これはユウタの強い思いが神、自然の摂理をも乗り越えたと考えてよいのではないでしょうか。
私が最も心揺さぶられたのはおばあさんです。谷育子さんが声優を勤めていますが、時間をかりている身であるユウタとさえ子は本当は全くおばあさんとは関係がない。おそらく記憶が植えつけられたからってああはならないと思うのです。今まで一人で暮らしていたおばあさん、さえ子と二人きりでさえさみしいというような言葉を口にしています。きっとそれまで一人でさみしく暮らしてきたおばあさんが全く気がつかないことはないと思うのです。ですからやはりどこかで悟っていると思います。それでも全てを受け入れてくれるおばあさん。さえ子もユウタも最後にはおばあさんにさようなら、ごめんなさいという言葉を残していきます。私の祖母もこんな優しい人でした。早くになくなってしまったのが今でも悔やまれます。
ここには人と人との交流、特に愛というものが根底を流れています。それは老人が子どもに対する無償の愛であったり、親が子に対する愛であったり、妹がお兄ちゃんを思う愛であったり、夫婦の愛であったり、友情であったり、生きるというテーマのもと人間の可能性についてもう一度考えさせられます。
父の死、それを乗り越えるという点で「ももへの手紙」とも似ています。やはり震災の影響は意識的にしろ無意識的にしろ必ずどこかで現れてくるのです。それを無視してはいけませんし、そればかりに気をとられて前に進めなくてもいけないのです。今までに先例がないのですから、認めながら共に歩んで行くほかないのです。どうしようもないからといってほっぽってしまってもいけないのです。強く活きなければいけないのです。

絵もよし、音楽も松任谷夫婦によって見事に完成させられています。私が責任を持ってお薦めします。こんなに泣いた映画は久しぶりです。

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まとめtyaiました【映画『虹色ほたる~永遠の夏休み~』 感想とレビュー アニメーションでしか出来ない作品】

原作 川口雅幸(アルファポリス刊)監督 宇田 鋼之介脚本 国井 桂キャラクターデザイン・作画監督 森 久司画面設計 山下 高明美術監督 田村 せいき音楽 松任谷 正隆主題歌 「...

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