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「そよかぜキャットナップ」靖子靖文 榎本正樹教授との対談 駒沢にて 

「そよかぜキャットナップ」靖子靖文 榎本正樹教授との対談 駒沢にて 
榎本教授のホームページhttp://enmt.jp/
講談社BOX倶楽部のホームページhttp://www.bookclub.kodansha.co.jp/kodansha-box/powersselection/
なんと改訂前のこの記事を靖子靖文さん自身が御覧になられて少し伝わっていない部分があったからと丁寧に補足、改訂をしてくださいました。これは靖子さんに意見を反映させた上での再アップになります。


5月15日火曜3限の近代文学研究Ⅰの授業開始前およそ10分には大教室は普段より多く約67割の大学生に賑わっていた。ところが、教授は壇上から教室を見渡すと「なんか違うんだよな」とつぶやき、後ろに固まっている女子を前に移動させた。「ライブ感を演出してくれ」という要望である。
チャイムがなり「では靖子靖文(以下靖子)さんに登場していただきましょう」と榎本教授(以下榎本)が言うと後ろに座っていた坊主頭の青年が壇上へ向かって歩き始めた。「そうです、なんと靖子さんは皆さんにまじっていたんですね。」榎本。まとめると以下の通りである。

榎本、何故小説を書き始めたのか
靖子、就活がとにかく嫌だった。実家が寺なので、就職は結局しなかったが、周りの人間が頑張っている中自分も何かしようと思ったことが主な理由。
ライトノベルというジャンルについては、オタクである友人との出会いがきっかけで、自由度の高さに惹かれて書き始めた。
榎本、ライトノベルというと、アニメなどの影響はあるのか?
靖子、学生時代に影響を受けた作品として『けいおん』の世界観がある。しかし、様々なものに影響されやすいという一面があり、多くのアニメ・ラノベ・一般小説問わず影響を受けている。自分の中に確固たるものは未だない。その人にしか書けないような文章を書ける作家を尊敬する。その一人ととして尊敬する人物には「森博嗣」を上げる。
榎本、ゆるミスと評されるように緩い空気が漂っているが、これはゆるいミステリーであると同時に大学生小説、帰省小説、でもあり仕掛けのたくみさに驚いた。
靖子、何度も書き直しをしている。『どのこ』(=改題後『そよかぜキャットナップ』)は初めての創作で、あまり難しく考えずに自由に執筆したものである。仕掛けの巧みさを褒めて頂いたが、自由にかきながら何度も修正を繰り返していくうちに完成した仕掛けである。
榎本、この作品は他ジャンル的(ミステリ、ラノベ、青春小説など)であるが、それについては?
靖子、初めはメフィスト賞に応募しようと思ったが、最終的には講談社BOX新人賞に応募した。メフィスト賞はミステリー的色彩が強く、講談社BOX新人賞はラノベ的色彩が強い。応募当時、私はミステリ作家よりもラノベ作家のほうが自分には可能性があると考えていたので、既に書き上げていた『どのこ』をよりラノベらしく修正して、後者の賞に応募した。ミステリとしては大した事件は起きないが、当初はミステリを書くつもりだった。それが修正によってラノベ・青春小説に近づいた。
榎本、ゆるさには無駄も含まれているが、この作品はその無駄のよさが活かされている。T県という言葉が出てきてこれも一種のミステリであるが、日本で一番人口が少ないというところから鳥取だとわかった。 鳥取は妖怪など非日常とのつながりがとても強い場所でもある。
靖子、一時期田舎ブームというものがあった。田舎のよさというものを全面的に押し出すのは自分の望むところではないが、作品のなかには田舎独特の噂のネットワークが存在する。
榎本、東京と地元という対立は実際成り立たないと思う。田舎に流れるゆるい雰囲気が出ている。これは関係性の構築の問題だ。

靖子、田舎と都会ではコミュニケーションの性質が異なる。そういう点で田舎ならではのコミュニケーションを描いたつもりである。しかし、田舎のコミュニケーションが上質で、都会のコミュニケーションがそれに劣るということではなく、都会でも濃密な人間関係は築ける。環境が変われば人間関係の在りようも異なるということでは。
榎本、猫の失踪というミステリーとしては殆ど事件性のない物語を書くことのむずかしさがあったと思うが。
靖子、繰り返しになるが、途中で何度も考えながら何回も書き直した。プロットは頼れるだけの自信があるものを作れないので、その場で書いていくということをした。修正を重ねる中、先ほどでた田舎の人間関係から、高丸さんなどのキャラが産まれた。(当時応募予定であった)メフィスト賞は派手な作品が多い。だが、自分はそういうものがかけないので、徹底的に地味にしたら逆に目に留まるのではと思った。講談社BOX新人賞はメフィスト賞と姉妹賞的な関係なので、同じ戦略で目を引けるのではと思った。ちなみに、個人的に「ひぐらしのなく頃に」は好きだが、「田舎」での「事件」というと真っ先に思い浮かばれる作品なので、そのイメージから脱出する必要はあった。
榎本、この作品はゆるいといっておきながら、実際重いテーマを内包している。作品を一貫する独特なユーモア感はつらい最後への中和剤として機能しているのではないか。
靖子、ライトノベル的要素、恋愛や、敵と戦うとか冒険するとかを書けないからコメディにしてみた。
榎本、(恋愛要素に関して)間違っていたらそう言ってほしいのだが、男2女1という関係は普遍性である。ここから恋愛関係に発展するとき牽制しあってしまう。そして猫の名前のマコトは漢字で書けば「真琴」と作中にある。これは「時をかける少女」と全く同じ構図である。映画の時をかける少女からアニメ映画までのオマージュか。
靖子、すみません。違います。
榎本、なんだ違うのかよ。そこはそうですって言うんだよ。(一同笑)
靖子、これは「ボンボン坂」からである。ただ時をかける少女に似ているとはたまに言われる。
榎本、作中に、死の問題もある。死者との別れ、追悼の再定義のテクストではないか。(一例として)つかまった猫が保健所に行くかもしれないということで主人公は保健所に毎日通うが、そこでみた猫に対し救えない命、しかし心に留めることはできると意思を固める。
靖子、「死」の問題に関しては恐らく実家の職業(お寺)が関係している。また、小説になんらかの悲しみを落とし込むことの意義について遠藤周作に影響を受けている。 現代において死者との別れをどのようにすべきかという問いは、学生時代の研究テーマであった。その影響は、『そよかぜキャットナップ』にも出ているかと思うし、次回作の『ハイライトブルーと少女』(そよかぜの続編ではない)にも出ている。今後、同様のテーマを持ち続けるかどうかということに関しては定まっていない。
榎本、大矢さんと呼ばれる年配の人と主人公たちの交流がある。別の年代との交流である。大矢さんは若い主人公が来たときに告白するように社堂の話をしてしまうが。
靖子、非日常から物語は生まれるのではないかと思うところがある。作中の大矢にとって、弘忠たちの訪問は非日常の一つだった。
榎本、ヒールが出てこない作品である。これからはいい人のみの共同体から出て行くことが展望となるか。
靖子、(『そよかぜキャットナップ』は)よくも悪くも「ゆるい」だけの作品だと思う。人の負の要素を書くにはまだ実力が伴っていない。今後についてはまだ何も決まっていないが、私はプロット作りが下手なので、小さいことから書き始め、書きながら話を膨らましたいと考えている。
榎本、生徒からの質問をいくつか読み上げる。ネタが無くなったらどうするのか。
靖子、未だ書いたものが少ないからネタが無くなるということは体験していないが、すぐ切り替える。そして先ずは書いてみるところからはじめる。
榎本、「山田詠美」のように書き換えが重要では。そうすることによってダイナミックさがでるかも知れない。
靖子、プロット至上主義といえる流れがある。自分も小説の書き方のようなものを読んでそう思っていた。確かにプロットを作る意義はある。しかし編集さんに言われてその限りではないと気がついた。私は書く前に設計図を仕上げるよりも、書きながら作ることのほうが向いているので、書き始めの段階では遊びの部分を多く残している。
榎本、(生徒より質問)文章の構成で貴をつけていることは?
靖子、リズムというものには気をつけている。会話のリズムは崩したくない。また、フィクションにおいて全面的にリアリティーが必須であるとまでは考えない。作品ごとにリアリティーをおろそかにしてはいけない部分があるとは考えるが、物語は多くの場合、非日常から紡がれるものである。キャラクターは日常からずれているほど際立つ、とは考えている。 忠弘と啓太は初めキャラが被っていたため、受賞後によりライトノベルらしいキャラになるよう変更した。
榎本、(生徒より質問、作家を志した経緯について)将来僧侶になることへの忌避があったのか?
靖子、僧侶になることの忌避より、就活から目を背けたかった。就活からの逃亡が小説を本格的に書き始めた一因である。ちなみに、(将来僧侶になるならば)曹洞宗なので一年半の修行があり、これをいつ行うか、その間は執筆活動ができなくなることが問題ではある。
榎本、これから何を書くのか。
靖子、広い意味での「人間関係」があるかと思う。その中には死者と生者の関係も含まれている。いつか『そよかぜキャットナップ』の続編を書きたいという気持ちは強くある。

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まとめtyaiました【「そよかぜキャットナップ」靖子靖文 榎本正樹教授との対談 駒沢にて 】

榎本教授のホームページhttp://enmt.jp/講談社BOX倶楽部のホームページhttp://www.bookclub.kodansha.co.jp/kodansha-box/powersselection/前回の記事では私個人の視点で作品を論じました。今回はこの作品にあ

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拙作の書評および、対談を文字におこしていただきありがとうございます。誠に感謝しております。
対談についてなのですが、私の説明不足から、いささか誤解を生じているように思いました。何点か訂正させていただきたいので、よろしければ、メールアドレスを教えてください。

yasukoyasufumi@gmail.com 
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