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『天城こえ』 松本清張 への試論 テクスト分析から

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あまり社会では知られていませんが、隠れた名作です。アンチ伊豆の踊子作品として研究されています。松本清張はまあ今で言ったら東野さんのような感じですかね。

・このテクストも一人称回想型のテクストであるが、語られている出来事は30数年も前のことである。構造は語り手を複数設定した多元的な構成、つまり私の語り・田島刑事の語り・私と田島刑事との対決になっていて、特に直接対決がポイントとなっている。
・女性表象では詳しく分析することによって、読者は語り手自身でさえが気づいていないことを読み取ることができる。なぜなら表象は主体の意識を無視するからである。ハナの交合では「土工が女に」となっている。母親の場合は「母親が父でない男性と」というように主語がおかれている。ハナの場合は美化と土工殺しの正当性を、母の場合は一見母を恨んでいるように読めるが、母の描写の多さ、家出のきっかけ、帰宅後の号泣などから母への屈折した愛情が読める。
・ハナと母との相違は「自分の女が奪われる」という発言や美しかったハナが交合後に突然豹変し含み笑いをした点などから生々しい性的な表情は二人に共通していると考えられ、相違しつつ一致している。これらのことから私は母への反発から家を飛び出したが、他国という未知の恐怖の中で妖艶な女性と出会い、家に連れ帰され、母への愛情を再確認するという物語ということができる。
・このテクストは抑圧された記憶を蘇らせていく物語といっていい。というのも初めは土工殺害が記憶を抑圧していることだと考えられるが、本当の理由は私が憧れ知らず知らず母と重ねていたハナが土工に犯されること、母の性交が抑圧の原因である。
・抑圧された記憶がいつ呼び起こされたか、衝撃という言葉が二回本文に出てくるがそこがポイントとなる。一回目は調書読後の衝撃で、二回目は田島刑事との直接対決後の衝撃である。特に田島刑事の呼称のめまぐるしい変化は私がこの上なく動揺していることの現れである。つまり田島刑事により完全に抑圧されていた記憶が呼び起こされたわけだが、犯行の動機が自分の女を奪われたこと、それは人間の持つ性的欲望のすさまじさを感じてしまったからだということを思い出したのである。
・結論として三十数年前の土工殺害という行為を反省する物語ではなく、衝撃的な記憶を呼び起こされ、それを見つめることによって自分が支配されてしまうという私が苦しめられる物語を描いたテクストである。

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